【123本目】ハドソン川の奇跡(2016年・米)

 文字数減らす。予定。


【感想】

 SF映画やアクション映画では、人の命の危機に晒される状況下で、主人公やその仲間がその場で下した判断を実行して人々を救う、という展開がよくありますよね。有名どころだと直観で発砲しまくる【ダーティ・ハリー】とか。


 イーストウッド監督とトム・ハンクスのタッグが話題となった【ハドソン川の奇跡】は、実際にそのようにして独断で人々を救ったヒーローについて描いた映画です。

 1時間半強というイーストウッド映画にしては短い尺ながら、イーストウッド監督作品の中でも【アメリカン・スナイパー】や【グラン・トリノ】に次ぐ興行成績を残しており、2016年のアカデミー賞でも音響編集部門にノミネートされています。

 2016年の映画でありながら2009年のことを描いた映画なので、今年初頭に公開された同監督の【リチャード・ジュエル】(1996年の話)よりも全然生生しい作品に仕上がっています。


 この映画は飛行機の墜落事故を咄嗟の判断で防いだパイロットの物語です。

……とだけ聞くと【世界まる見え】や【アンビリバボー】でありそうな話のように見えますが、あれらの番組でよくある生還秘話が事故それ自体にスポットを当てているのに対して、この映画でスポットを当たっているのはどちらかというと事故の後です。


 トム・ハンクス演じる主人公・サリー(吹替CVが江原さんじゃなかったの残念……)は事故の後、「もっと安全で確実な対応ができたのに、それをせずに危険な対応をしたのでは?」という批判を、事故調査委員会から浴びせられることになります。


 【ダーティ・ハリー】がそうであったように、イーストウッド関連の映画では英雄は時として賞賛どころか批判の対象となりますが、この映画でもサリーは、マスコミに英雄と称されながらも、その実事故調査委員会から批判され、パイロット人生すら危うくなる状況に立たされるのです。


 苦境に立たされたサリーが、それでも一つの確信を持って公聴会に出席してからの終盤の展開は、サリーのみならず、人々の命を背負ってフライトを実行するあらゆる航空機パイロットや、不測の事態に対応するあらゆる公共機関への敬意が込められた場面に見えました。


【好きなシーン】

 サリーの回想で、旅客機が事故の危機に見舞われるシーンが何度か挿入されるんですが、その光景がニューヨークのビル群の中を旅客機が飛んでて、日本人の僕でも911を連想させられる絵面になっていたのが印象的でしたね(冒頭の旅客機が墜落、爆破するif回想は特に)。

 中盤くらいのお偉いさんが「NYではいいニュースは久しぶりだ。特に飛行機がらみではね」という発言から、その絵面が意図的に911的に作られていたことがわかるんですが、刑事や軍人などと比べると(相対的に)地味な職業である旅客機パイロットであるからこそ、ああいうわかりやすい大惨事のif映像を挿入することが必要だったのかもしれません。


 あと終盤の公聴会で、調査員の女性が前代未聞の事故にも関わらず死者が一人もいなかった結果について、咄嗟の判断で動いたサリーを【Xの存在】として称賛しますが、それにたいするサリーの返答は、特撮ヒーローものを好きで見ている自分にはハッとさせられる発言でしたね。

 実際に危機が起きたときはヒーローが一人や数人の力で全部解決させるんじゃなくって、大勢の人が連携することで初めて危機を解決させるのかもしれない、ということを改めて実感したというか……

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