【134本目】シラノ・ド・ベルジュラック(1990年・仏)

 これ書いた日の翌日(12月3日)に【シラノ・ド・ベルジュラックに会いたい!】(最終日)を観に行く予定。


【感想】

 フランス映画でいきます。


 19世紀末に上演され、現代でも世界各国で公演されている戯曲を原作としているのがこの映画です。同劇の映像化はシェイクスピアの劇よろしく定期的に行われていますが、本作は同劇が生まれたフランスが80-90年代水準で製作した映画であり、【シラノ・ド・ベルジュラック】という物語を知らない人にも進めやすいつくりの映画となっています。


 仏アカデミー賞ことセザール賞で13部門ノミネート・うち作品賞含む10部門を受賞(同賞ノミネート数・受賞数では最高記録)し、1990年のアカデミー賞でも5部門ノミネート、うち衣装デザイン賞を受賞しています。


 物語は、詩の才能はすごいけど、ピノキオみたいな鼻のある自分のルックスがコンプレックスとなって思い人の従妹にもアタックできずにいる主人公の話です。そのためそれとなく思い人と会話したり、新任の部下(イケメンだけどボキャ貧)のラブレターのゴーストライターを務めたりしつつも、思い人にはなかなか自分の思いを打ち明けられません。

 

 そんな彼が死ぬ間際でも最後まで自分らしく詩的な表現を喋り続け、死ぬ直前に思い人からの愛を得るラストシーンは、少しでも心や体にコンプレックスを抱いたことのある人であれば感涙間違いなしでしょう。


 なおこの映画公開の翌年に、ディズニーが見た目に囚われない愛をテーマとした【美女と野獣】をヒットさせたりしています(まあアレ結局イケメン王子に戻っちゃうけど……)。

 世界各地で人種差別など見た目の違いから起きる差別や迫害が深刻な問題として顕在化しつつあった1990年代にあって、【見た目に囚われない愛】【醜くとも、自分に自信を持つこと】をテーマとした19世紀の戯曲が傑作映画としてよみがえることは必然であったと言えるのではないでしょうか?



【好きなシーン】

 ジェラール・ドパルデュー演じるシラノが喋ってるシーン全般っすかねー。

 バケモン級のボキャブラリーで詩的な台詞の数々を動作を交えつつ(時には剣を交えながら)流れるように放ち続ける姿はさながらフリースタイルのラップを聞いているようでしたし、フランス語の音声も日本語の字幕もリズムや響きが心地よいのでミュージカル映画を見ているようですらありました。


 後はベタですけど、思い人がイケメン部下とともにいる光景を辛そうに見ているシラノが見てていたたまれなかったですね……【男はつらいよ】の寅さんにも通じる哀愁がありますよあのシーンは。

 

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