【93本目】ダイ・ハード(1988年・米)

 ところどころでバイきんぐ西村にしか見えないシーンがあった。


【感想】

 1988年の夏は、クリント・イーストウッドの【ダーティ・ハリー5】、アーノルド・シュワルツェネッガーの【レッドブル】、シルヴェスター・スタローンの【ランボー3/怒りのアフガン】と、アクションスターによる直球アクション映画が一挙に上映された、アクション映画オタクにとっては夢のような時期でした。

 全くの新作ながらそれらの作品すべてを興行収入で上回ったアクション映画こそ、ブルース・ウィリス主演の【ダイ・ハード】でした。

 製作費の約五倍の興行収入をたたき出したこの映画は、アカデミー賞でも音響編集賞をはじめとする4部門にノミネートされており、他アメリカンフィルムインスティテュートでは2001年に「スリルを感じる映画ベスト100」の39位にも選ばれています。


 【ダイ・ハード】がそれ以前の映画と比べて画期的だったのは、やはり【閉鎖空間でのアクション】という点でしょう。世界どころか、国や街が脅かされるわけでもない、一つの建物の中での事件を描いた、アクション映画の中で言えば非常に小規模なストーリーのはずなのに、マクレーンが容赦ないテロリストからビルの構造を利用して逃げ回り続けるというプロットで緊張感を持たせるという巧妙なシナリオですね。

 のちのハリウッド映画への影響も強く、例えば【スピード】なんかは一時【Die hard on a bus】なんて呼び方もされたそうです。

 最近だとエメリッヒ監督の【ホワイトハウス・ダウン】やロック様主演の【スカイスクレイパー】なんかがこのタイプの映画ですね。


 でも何といっても、体格や性格に優れた部分があるわけではない普通のおじさんがアクションヒーローを務める、という点でより【ダイ・ハード】は画期的だったように思います。

 ランボーやメイトリクス大佐のような鍛え抜かれた肉体を持ち合わせているわけでもなければ、ハリー・キャラハンのような機械じみた冷徹さを持ち合わせているわけでもなく、単身赴任中で嫁さんともややギクシャクしていて飛行機が苦手、という冴えないおじさんが主人公なわけですからね。

 ましてブルース・ウィリスは今でこそアクションやシリアスを難なくこなすハリウッドスターですが、当時コメディ俳優としてのイメージが強かった役者なので、なおさらアクション映画で主演を務めるには少し頼りない存在でした。

 そんなブルース演じるマクレーンが不満をたらしつつも頭と体をフル回転させて時に逃げ回り、時に外部と連絡を取り、ここぞというときにテロリストを迎え撃つ姿にこそ、心打たれるんです。


 また舞台となるビルが日系企業の所有で(原作小説だと普通にアメリカの企業らしい)、テロリストが海外進出盛んな日本人に制裁を加える、というていでビル占拠を起こす、という当時のバブリーだった日本を垣間見られる作品でもあります。

(でもあの社長正確には日系移民だから日本人とは別じゃね?とも思うけど)

 今リメイクするとしたら確実に中華企業所有のビルになるでしょうねー。で、人質の会社員の中にオタクっぽい日本人が混じってんのよw


【好きなシーン】

 マクレーンと弟トニー・兄カールとの格闘戦(取っ組み合い)の両シーンは、正に彼がイーストウッド系統でもなければシュワルツェネッガー・スタローン系統でもない独自路線のヒーローであることを象徴するシーンだと思いますね。あのクールでもスタイリッシュでもない泥臭い格闘こそ冴えないおじさんヒーロー・ジョン・マクレーンの持ち味って感じですよ(こういう泥臭さは割と4.0とかの時代になっても維持されてる気がする)。

 特に前半は、その取っ組み合いが階段から落ちてのトニーの事故死というスマートさの一切ない決め手で終わるので余計にそう思います。

 

 あとビル内の空間の隔絶ぶりを強調するためか、司令センターやTV局のシーン(あと車内のアーガイルw)がやたら緊張感がないのの高ポイントですね。

 エリスやロス市警のお偉いさん、FBIやTV局のレポーターなど、そういう緊張感のない連中にマクレーンが足を引っ張られ続ける展開も、孤立した状況という意味でビル内で孤軍奮闘してる映像とマッチしていますね。

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