第44話 想いは…⑥

 「扉を壊したら兄貴が…」


 怒る。そう言おうとした。

 この家の所有権は兄貴の物だからだ。


 「たいきにぃから許可はもらってるよ」


 なんと、兄貴公認の行動だった。

 

 「さくまにぃ。何があったか分からないけど、やっぱり西川さんが関係してるんでしょ。もう一回西川さんと話をしてみてよ。そしたら、何かわかるんじゃない」

 

 紗季はどう励ましたらさくまにぃは元気になるのかを考えていた。

 今のさくまにぃに必要なのは目的だと思った。目的が見つかればきっと、さくまにぃはいつものさくまにぃに戻ってくれると思ったのだ。

 だが、もう既に佐阿は諦めていた。


 「もう、いいんだ」


 もうほっといてくれと言わんばかりに顔で言った。

 

 「分かった。さくまにぃ。そこに立って」


 部屋の真ん中で立ちようにと指示されて立つ。

 

 俺をそのままにして、紗季は部屋を出たと思えばすぐに戻って来た。

 右手にボクシンググローブをして。

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