第34話 後悔②

それから数日が経った。

 毎日西川さんの病室に通った。けれども西川さんが記憶を取り戻す事はなかった。

 そして、今日は退院だ。

 体に異常はないし、日常的なものの記憶はあるので家で様子を見る事になったのである。

 西川さんが退院したその日の夕方。憲から相談があるといつもの公園に来て欲しいと言われて公園へと向かった。

 公園に着くと憲は既にベンチに座って待っていた。

 

 「これ、買ったのでどうぞ」

 

 憲が缶コーヒーを俺に手渡した。


 「ありがとう。それで相談っていうのはやっぱり、西川さんの事か?」


 「はい。そうなんです。実は…」

 

 憲の相談はこのままの方がいいのか?だった。

 その言葉の意味は家での西川さんと母親が関係している。

 西川さんが記憶をなくした事によって前までとは違い母親ともよく話すようになり、母親も西川さんの事をちゃんと娘として見ている。前までにしたらありえない程に仲睦まじい光景。


 「僕にしてはその光景は望んでいた光景ですが、何か違うんです。まるで、その…別の人みたいな。そんな気がしてたまらないんです」

 

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