第14話 歪み
「でさー、その人が全然振り向いてくれないんだよね」
春佳はパソコンの前で寝ころびながら、マイブームとなっているMMO「モイプルファンタジー」を昔から仲のいいフレンドと一緒にプレイしていた。
『えー、脈あるのそれ』
「あるある!絶対ある……はず」
『自信なさげじゃない。それじゃあ、1回引いてみるってのはどう?』
「引く?」
『そう、よく押してダメなら引けっていうじゃない?それよそれ』
「そんな単純なものなのかな……」
『そうよ単純なものよ、考えすぎなのよ春佳は』
「……わかった、試してみる。ありがとう咲香」
『応援してるよ』
――――――――――――――――――――――――――
何の変哲もない平日の朝…のはずなのだが琢磨は変哲しかない朝を迎えていた。
「お、カイトおはようー」
琢磨は見覚えのある後ろ姿を見かけ普段通りに声を掛けた、がいつもの弾むような春佳の返事は聞こえてこなかった。
「(人違いでもしたかな…)」
琢磨は少し不安に思いながらも、見覚えあるシルエットの肩を叩いた。露わになった顔は琢磨の人違いなどではなく春佳本人だった。
「あ、おはよう」
彼女は短くそう言うと慌てた様に琢磨から逃げるように駆けて去ってしまった。
「俺、何か悪い事したかな…?」
空は鼠色の雲が太陽を隠すように覆いかぶさっていた。
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