第24話 モヤモヤと相談

 家についても、ツバキは暗いままだった。ツバキはここ2ヶ月のお嬢様教育のおかげで見た目も、喋りかたも変わった。そう、俺への態度も。


 前は家族のように、友達の様に接してくれたのだが、今は雇い主の様に接してくる。影武者になってもらいはしたが、友達でいてほしかったのに、最近では様付で読んでくるし、俺が何か言うとビクッとしたり、落ち込んだりする。


 外に出るときは双子の姉の設定通りに接してくれるのだが、帰りに謝ってくる事や、しっかりとできていたかを聞いてくる事が多くなった。前みたいにあの花が綺麗だとか、雲の形がどうだとかの話はしてくれない。


モヤモヤした気持ちで部屋の扉を開けると、ルイが待っており、紅茶を入れてくれている。


「ヴァイス様おかえりなさいませ」


 執事のようにお辞儀するルイをみてギリッと歯ぎしりを、してしまう。


「ルイまで、止めてくれ。今まで通りでいいって」


「ごめんごめん。ここに来てからの教育で習ってるから…つい…ね?」


 そう、変わったのはツバキだけではなく、ルイもマリもフィラも同じだった。ここに来てからの教育で主は誰かって話をされたらしい。4人は俺のわがままでここにいる。なので父ではなく、俺が主と言うことになっている。


 だからなのか、4人は稽古だの教育だので、あまり会わせてもらえない。特にマリとフィラはツバキ付き従者なので俺と会うことは俺がツバキと会うよりも少ない。もはやここ2ヶ月で4回ぐらいしか会っていない。従者と言っても見習いなので余計に会わせてもらえないのだ。主に見せるにふさわしくない振る舞いとかなんとかで。

 しかし、ルイだけは俺付き従者なので、会える事も多く、普段通りにしてくれとお願いしている。時々謎に執事の様なスイッチが入るのだが、それでも、3人よりはましだ。


「なぁ、ルイ。俺ツバキを影武者にしたの間違いだったのかな?」


 膝にシュヴァをのせ、なでながらルイが入れてくれたお茶会を飲む。心が落ち着き、ラマールに言われた事や、ツバキの態度を思い起こす。


「おや?悩み事かい?」


「あぁ、今日ちょっとラマール様に色々言われてな。後、ツバキもルイも最近俺を友人ではなく、使える主の様に扱うから…間違えたのかなって」


「アハハ。ヴァイスもそんな事で悩むんだね~」


も?俺の他にも同じ様な事で悩んでいる人がいるのか?


「ツバキもね、最近どうやって接して良いかわからないって言われたよ。何でも、友人があまりにも、お金持ちのおぼっちゃまだったし、主になったのでどうしたら良いかわからないってさ」


ツバキ…が?


「遠くに行った気がするってさ。あ、ちなみにマリとフィラは何も考えてないよ~おっきな家サイコーって、剣術や魔法も楽しいって。僕もあの子達に人並みの教養を、教えてくれるのは助かってるし、ヴァイス専属って言い方気に入ってるんだよ」


 俺、ラマール様の話聞いて、ルイも俺が邪魔になるかなって思ってた。だってツバキはリディアになればここの令嬢だし、給料は父から出てるけど、主は俺って習ってるらしいし、俺がいなくなったからって言ってツバキをポイッと捨てるわけにもいかない。だから俺がいなくなっても実の娘の様に可愛がるだろう。

あ、でもそっか、俺がリディアと同一自分物とは知らないのか。…でもそんなのも時間の問題だろうし。


 きっと邪魔に、なるんだろうな。使えたくもない人に使えてって思ってた。だから、俺の周りは敵だらけなんだって、しかも俺のよくわかんない悪役令嬢の運命にツバキも巻き込んで、たとえ嫌われて殺される事になっても皆を守らなきゃって思ってた。


 でも違うんだ。マリもフィラもここの暮らしを楽しんでて、ツバキもまだ俺の事を友達と思ってて…。


「ルイ、決めたよ。今日皆を俺の部屋に呼んで」


ルイがやっと決めたんだねと言ってるようなウィンクの後に似つかわしくもない様な、お辞儀をする。


「かしこまりました」

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