人は、変わる―(18/21)


※~[玉野優司]視点~※



関おじさんから聞いて、酷く動揺した。


まさか、百合花が体調を崩すなんて……。


「ねえねえねえ! プリンとヨーグルトだったらどっちがいいかな!?」


「女子と言えばプリンだろ! ま、如月がプリン食べてるところなんか見たことないがな!」


「じゃあプリンとゼリーなら!?」


「四の五の言わずどっちも買っちまえ!」


児童館のクリスマスパーティーが終わって、僕達は百合花のお見舞いに行くためにスーパーに立ち寄っていた。


「見てこれ!! ショートケーキ味のおかゆだって!! どゆこと!?」


「どう考えても罰ゲームだな! よし、今日サボった罰で食わせてやろう!!」


「じゃあこっちの激アツ貼るホッカイロも貼ってあげよ~!☆」


「二人とも、遊びじゃないんだよ」


カゴの中に次々と物を入れていく二人を制してレジへ向かう。


「だって~、今日がダメなら明日もダメじゃ~ん! せっかくパーティー楽しみにしてたのに!」


「オレも鉄のダンスを磨きに磨き上げたってのに、無駄になっちまったじゃねぇか!」


「仕方ないよ。それはまた今度にしよう」


会計を済ませ、商品を買い物袋に詰めてスーパーを出る。


結構減らしたつもりだったけど、4袋分にもなっちゃった……。

無駄な買い物だって、また百合花が怒りそう。

まあ、怒ってくれるほど元気だったらいいんだけど……。


「でも珍しいよね~、百合花が風邪引くなんて」


「たとえ引いても無理して来そうなのになぁ。まさか仮病!?」


百合花はそんな嘘をついたりは……しないと思うけど、まさか僕を避けるために……しないよね……。

最近よそよそしかったのは、気のせいだよね……。


たとえ、今日があの日だったとしても……。


もしかして、なかったことにしたいと思ってる……?

僕から逃げたいと思ってる……?

まさか、本当に仮病を……。


百合花の家へ向かう途中、ずっとそんなことを考えていた。


自分からふっかけたとはいえ、彼女にとんでもないプレッシャーを与えてしまった。

あの頃は思いきって言ってしまったけど、今思えばとんだ身勝手な勝負だ。




「――百合花~! お見舞いに来たよ~!」


家に着くと、玄関の鍵が開いていた。

関おじさんはまだ帰ってきていない様子。


「如月~!! 無事かぁぁぁ!!」


靴を脱いだ浅田くんとすずめちゃんは、階段を上がって二階へと向かう。


よく来てるから躊躇いはないみたいだけど……止めたほうがよかったかな……。


と思いつつ、二人に続いて階段をのぼる。


すると。


「優司~!! 百合花がいないよ~!!」


すずめちゃんが階段の上から顔を出した。


……え?


「もぬけの殻だぞ!! 失踪事件だ!!」


見ると、確かに部屋の中にはいなかった。

鞄やケータイはある。

でも、コートがない。


――まさか……。


恐る恐る腕時計を見る。針は――5時18分。


「そんなはずは……!」


慌てて階段を下り、靴を履き直す。

よく見ると、百合花の靴はなかった。


「優司!? どこ行くの!?」


「待て!! 警察に届けるにはまだ早い!! もしかしたらシャワーを浴びているのかもしれない!! オレが覗きに――」


「二人はここで待ってて!」


そう言い残し、走って外へ出た。


どうして……!

まさかそんな……!

いくら約束したからって、風邪を引いてる時に……!

鍵をかけ忘れるほど気が回らない時に……!


いや、もしかしたら病院に行っているだけかもしれない……そうだ、きっと……!


そうであってほしいと願いながら、あの場所に向かった。




走って、走って、走り続けて――。




着いたその場所は真っ暗で、消えかかった弱々しい外灯が一つだけあって、その下には見覚えのある人影があった。




「――百合花っ!」









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