再び、取り戻す―(18/26)

※~[カリオス今田]視点~※



「だから知らねぇって」


「いえ!! 確かに女子寮で見ました!!」


「行ってねぇって」


「でも私は見ましたっ!!」


「ただの見間違いだろ」


「そんなことないです!! しらばっくれてもダメですよ!!」


「ったく、うるせぇなぁ……」


俺は今、寮のロビーでピンク野郎に問い詰められている。

こいつが、女子寮に侵入する俺を見たとかで。

相変わらずデケェ声でうるさいんだよ。


ま、確かに行ったけど。


「証拠はあんのか?」


「ないです!!」


そんなハッキリと……。


「でも、私は見ましたから!!」


「マッケンとかだってよく行ってんだろ」


「あの人は百合花先生に許可をもらってるからいいんです!! 不服ですけど!!」


え、そうなのか?


「じゃあ、俺も許可をもらってるってことで」


「何言ってるんですか!! ダメですよ!! それに、今田さんは本当はヘンテコ人間じゃないんですから、風紀くらいちゃんと守ってください!!」


そんなデカい声で暴露するなよ。

極悪生徒会メンバー以外は知らないんだからよ。


「へいへいわかったわかった。今度からは気をつけてやるよ」


「認めましたね!! 上から目線なのがちょっと気に食べませんが!!」


その日本語はおかしい。


「お前、今日は一段とうるさいな」


「失礼ですねっ!! ……でも、叫びすぎてちょっとフラフラします;」


アホか。


「ストレスでも溜まってんのか? 王子に無視されたとか」


「会長は無視なんてしません!! ストレスだって溜まっていません!! イイことがあったから、張り切ってお仕事をしているだけです!!」


「イイこと? 王子にスキンシップされたとか?」


「ち、違いますよ//!! なんでも会長に繋げないでください//!!」


「じゃあなんだよ」


「凛さんとお話ができたんです!!」


「Σなっ!!」


なんですって!?


「うらやましいですか!? うらやましいですよね!!」


「べ、別にっ……」


こんな奴に先を越されるなんて……!


「アダ名までつけてもらっちゃいました! 桃子は嬉しいです!♪」


「〝アイラブ王子〟とか?」


「バカにしてるんですか!!」


「多少はな」


そこまで王子命の人間は、他だったら奴の母親くらいしかいない。


「む……本当なだけに言い返せない;;」


認めたし。


「でも凛さん、粗方元に戻っていましたよ! 今田さんが凛さんに酷いことを言ったことは百合花先生から聞きました! 後になればなるほどつらくなります! 謝るならいつですか!? 今でしょ!」


一人で何言ってんだこいつ。


「なんで俺から謝らなきゃいけねぇんだよ」


「えっ? でも、凛さんに謝りに行くために女子寮に行ったんじゃ……」


「別に。用があったのは違う奴だし」


嘘は……ついてないと思う。


「Σそうなんですか!? 見損ないましたよっ!!」


「お前には関係ねぇだろ」


「ありますよ!! 凛さんのためなら今回は許そうと思ったのにっ……やっぱり許しません!! そのハレンチ行為は正生徒会で罰します!!」


めんどくせぇな……。


「──あ!! 王子があんなところで着替えを!!」


「Σえっ!? どどどどどどこですかぁ//!?」


俺はピンクがよそ見をしているうちにその場から離れた。


……どっちがハレンチだよ。


「Σあ!! 逃げるなんて卑怯ですよっ!!」


お前にかまってる暇なんかねぇんだよ。


ったく、イライラする……。



  • Twitterで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る