正生徒会、現る―(8/11)


「……保健室ノ、先生……」


出口に立たないでください、逃げられません。


如月百合花きさらぎゆりかよ。百合花先生って呼んでね」


了解しました。

では道を開けてださい。


「ワターシニッポン語ワーカリーマセーン」


「安心なさい。あなたをどうこうするつもりはないから」


嘘だ。

笑顔が怖いもん。


「ただ、聞きたいことがあるだけよ」


「聞キタイコト?」


「えぇ。あなた、玉野王子君におイタしたでしょう?」


…………。

とばっちりだ……。


「さっき、保健室で手当てをしていた時に聞いたの。黒板消しに催眠薬を混入させるなんて、手が込んだことをしたわねぇ」


やっぱり私だけが責められるのか。


「確カニ、黒板消しヲ仕掛ケタノハ、ワターシデスガ、催眠薬ヲ仕込ンダノハ、違イマ~ス」


「じゃあ、どの子?」


「…………」


言おうかな~……言っちゃおうかな~。


「どの子?」


詰め寄らないでください。


「エット……ナントナク……数名……」


日本語おかしくなっちゃった。


「言わないのね。お友達を守りたいのかしら」


お友達ではありません。ただのクラスメイトです。


「……まあいいわ。そのなんとなく数名の子達、どうやって催眠薬を手に入れたのかは言ってた?」


「拾ッタ、ラシイデス」


嘘だと思うけど。


「あら、やっぱり。きっと私が落としたやつね」


∑ってオイ!!

落としたってなんですか!!


「勝手に使うのはダメよね。お仕置きが必要だわ。どんな子達かしら……フフ」


やっぱり秘密にしておこう。


「その子達は、どうしてそんなことをしたのかしら?」


「……ンー……。生徒会長ノコトガ、アンマリ好キジャナイカラ?」


「それはそうでしょうね。目の敵でしかないと思うわ」


やっぱり先生方もそこは認知しているんですね。


「……それで? ロボちゃんは?」


……は?


「ロボちゃんも、あの子のこと、嫌い?」


そんなこと聞かれても……。

っていうか、ロボって呼ぶのやめてくださいよ。


「……私ハ……別ニ……」


「正直に言っていいのよ」


「イヤ……本当ニ……トイウカ、興味ナイデ~ス」


「あら、そう……」


なんでそんなに物珍しそうに見るんですか。


「ならいいわ。今回のことは許してあ・げ・る」


キュピン。


ウインクされちゃった。


「ヨクワカリマセンガ、アリガトーゴザイマ~ス」


「いいのよ。私は、ロボちゃんの気持ちが聞けただけで十分だから」


理解不能です。


「それじゃあ、またね、ロボちゃん」


……行っちゃった……。

立ち去る後ろ姿も妖艶且つカッコいい。

さすが大人の女性ですね。




その後、私もすぐに鞄を持って寮に帰りました。

面倒な人に見つかると面倒ですし。


自室に戻ってジャージに着替え、しばらくゴロゴロした後に食堂へ向かいましたが、あんまり食欲がなかったので、夕飯は半分以上を残してしまいました。

フランス人形みたいな格好のナルシーさんに処理していただきましたが。


「ダメねぇ、トロちゃん。そんなんじゃ、富士子みたいなナイスバディは作れないわよ、ウフッ♪」


「……ソウデスネ」


別に作りたくありませんが。


「そうだ! この後、一緒にお風呂に行きましょ!」


え……一緒にお風呂……?

やだな……。


「……アァ……ハイ……」


でも断れないんだなこれが。


「また覗くんじゃないわよ、ピーラー」


「覗かねぇよ!」


昨日覗いたんだピーラーさん。

そして見つかったんだピーラーさん。


「露天風呂は混浴だったなんてウカツだったわ」


露天風呂あったんだ。

しかも混浴だったんだ。

それは覗きというのですか?


「トロちゃんにも富士子のビューティフルボディをお披露目ね♪ ほら、行くわよ!」


別に見たくないんですが。

まあ、どうせいつかはご一緒するであろうことは予想していましたから、いいんですけどね……。

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