ヘンテコ人間、現る―(5/9)


「トロ!? どうした!!!?」


「ゾンビガガガガガガガガガガ」


「レディガガ!? どこだどこだ!?」


ちょっ、黙れ!!

こっちは腰抜かしてんのに!!


「あ、あの……僕はゾンビではありません……人間です……」


「ん!? だ、誰だお前!! レディガガじゃねぇな!! 名を申せ!!」


「ぼ、僕の名前はキング・オブ・マッケンジャーです……このクラスの、生徒です……」


名前かっけぇ!


「略してマッケンか!! で、なんでそんなとこに入ってんだよ!」


「あ、その……初対面の人と会うと……緊張するので……」


だからって理由にはならないから!


「なるほどな!! だがそこにいると邪魔だ!! どけ!! そして掃除を手伝え!!」


「は、はい……!」


マッケンさんは床に座り込んでいる私をまたいでロッカーから離れました。


……いやいや、おかしいよね、君。

あんたのせいで腰抜かしてんだよ私。


「トロ!! お前も邪魔だ!! さっさと立て!!」


「デ~ハ、手ヲ貸シテオクンナマシー」


「仕方ねぇな~」


…………あ。


「ア、ヤッパリイイデ~ス」


「は!? 喧嘩売ってんのかトロ!!」


そのあだ名やめてほしいな。


私は自力で立つと、ロッカーからホウキとチリトリを取り出した。


……なんかさ、カスさんの手って、ケガれてそうじゃん?


「皆サン、早ク、キレーイキレーイシマショ」


「意味不明なやつだなぁ……まあいっか!」


お前には言われたくないわ。


そんなこんなで、皆さん、意外と真面目に掃除をし始めました。


「ウイィィィィィィ!!!! キャッホォ~!!!!」


「やーん、ガラスに映った富士子輝いてる~♪」


「そなたは美しい……」


「チョークの粉が……僕をいじめるっ……ひぃっ」


別にいいんだけどさ、改めて思うね、ヘンテコ人間の個性をさ。


「……ン?」


よく見ると、床の一部がやたらと白い。

粉? 粒? 何かが大量に落ちている。

まさか毒物か!?


「…………」


いや、違う。

これはもしや……。


「や~ん、富士子ナイスバディ~♪」


ナルシーさんの、汗の結晶!!!?


「ビューティフルレディ~☆」


絶対そうだ。ナルシーさんの席の周りだし。

すごいなぁ、汗ってホントに塩なんだ……。


あ、カスさんが拭き取りに来た。


「この辺汚ねぇなぁ~、ヌルヌルしてやがる!」


脂肪分も出たんですね。


「クイックルハイパー!!!!」


あらま綺麗に。

ありがとうございます。


そういえば、さっきから思ってたんですけど、カスさんがキャンプファイアとかしたのに床に焦げ跡とか全くないんだな。

丈夫な床だ。耐火・耐水バッチリ。




「――よし!! ピッカピカだ!! そろそろ終わりにしようぜぇ!!」


「はいよ」


「はぁ~い☆」


「は、はい……」


「ハーイ」


私達は机を整えて用具をロッカーに戻します。


「雑巾とホウキとチリトリと。──じゃ、また明日な、マッケン」


「あ、はい……今日は楽しかったです……」


「マテマテマテェイ!!!!」


マッケンさんまでしまうな!!


しかも〝今日は楽しかった〟って、あんた掃除手伝わされただけじゃん!!


「なんか文句あんのかトロ」


「オカシイオカシイ……彼ハ、ロッカーノ神様デハアリマセーン」


「違うのか!?」


ちげぇよ!


「じゃあロッカーのゾンビか!!」


「違ウ!」


「じゃあロッカーの花子さんだ!!」


「違~ウ!!」


わざと言ってやがるなこいつ。


「ハッハッハ、そうムキになるなよトロ。冗談に決まってるだろトロ。マグロは大トロだろトロ」


トロトロうるせぇ!


「あ、あの、僕、ちゃんと帰りますから……」


信用できん。


「じゃあ皆で帰ろうぜ!! 玄関まで競走だ!! ドベケツは1ヶ月エレベーター使用禁止&グランド100周!!」


この学校エレベーターあったんだ~ハイテク☆


「よーい、ドンタコス!!!!」


「オイテメェ!! フライングしてんじゃねぇよ!!」


「富士子走るの苦手~!!」


「えっ、ちょっと待ってくださいよ~……!」


「皆サン、鞄忘レテマース!!」




──こうして私は、個性溢れるクラスメイトとともに、バタバタとお騒がせしながらも、無事に入学初日を終えた。






……わけではなかった。






実はこの学校、ヘンテコ人間を親元から引き取って、生活全般を更生させることが目的である学校なので〝寮制〟なんです。




ヘンテコ人間は、

夜もハイテンションです……。


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