もうすぐ死ぬのに恋をした

六升六郎太

プロローグ

 どうしようもない人生だったと、今にして思う。


 何一つ幸福というものを掴むことができず、最後は無気力と怠惰に塗れ、ただ漠然と過ぎ行く時に身を任せた。


 そのうち、指先から少しずつ細胞が死んでいくのを感じた。じっとしているだけで、鼓膜の奥からギシギシと耳障りな音が聞こえてくる。それがまるで悲鳴のように、私の胸を穿った。


 人は、生きながらにして死ぬことができる生き物なのだ。


 皆、生きているフリをして死んでいるのだ。


 自分を押し殺し、心を摩耗させ、堕落し、命を守るため、生きながらにして死ぬ決断をする。


 どこかの誰かが、それこそ生きるということだと、死んだ目をしてうそぶいた。


 生きながらにして死んでいるのであれば、今更死んでしまうことを気にする必要はないだろう。


 そう、たとえば、一週間後に死ぬとしても。


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