第12話

「わたくしもはなさんの言う通りだと思いますわ」

 そして隙間の空いた時間にみかこが入り込んできた。

「やっぱりなにをするにしたって、はじめから決めてかかってやったほうがいいと思いますの。京子さんでもまりのさんでも、しっかりとした将来のイメージがないから悩まれるんじゃないのかしら」

『…………』

 どう転んでもよくなりそうにしかならないみかこに言われて少々しゃくにさわったが、言われたことはもっともと思いもう一度思い浮かべてみる。

「私は大勢の部下を引き連れて、世界の大舞台で活躍したいわ」

「わたしは大勢の男の子にちやほやされながらなにもせずに暮らしたい」

 思い思いに将来像を述べる。それを聞いてみかこはうんうんとうなづいた。

「ほら、こうして思い浮かべてみればそれぞれに向かいたい先が見えてくるじゃありませんか。これなら大丈夫ですわ」

「…………」

 聞いてたはなは、大丈夫かな、本当に大丈夫かな、これって将来の妄想語ってるだけじゃないかな、と思ったが、言ったら悪そうな気がしたので黙っていた。

「そ、そうかな。じゃあさ、やっぱりわたしの目指してる方向性から行って、かわいくなるってことは間違ってないよね!」

 目を輝かせて言う。はなはまた目指してる方向性が間違ってるんじゃないかな、と思ったが、やっぱり黙っていた。

「そうよね! やっぱり大勢を引き連れて活躍するためには、誰よりも努力した人間にしかできないことよね!」

 同じように目を輝かせる。はなはまたも、きっとそういう人が上に立つからブラックな世界が生まれてくるんじゃないかな、とも思った。八百屋をやるときには従業員にやさしくしよう、と心に決める。

「そうですわよ。ですから気にされることありませんわ。だってお二方とも将来をきちっと見すえて今やるべきことをしていらっしゃるんですもの」

『うん』

 もしかしたら京子とまりのは勉強出来たり出来なかったりと揉めているが、根本的な所では同じくらいなのかもしれない、とはなは思うのだった。

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