第10話

 思い描くのは世界をまたにかけて活躍する自分の姿だったが、すでに同い年のみかこがやっているのを見ると、わざわざそれに追いつこうと努力していて虚しく思わないでもない。

「ほら、京子ちゃんだって実はまりのちゃんとそう変わらないくらいのことしか考えてないんじゃない」

 指についた砂糖の残りをなめながらはなが言う。

「そうよ! はなちゃんいいこと言った! うん、京子ちゃんもわたしとそんな変わんない!」

 今度はまりのの方が鬼の首をとったかのような騒ぎだった。そして京子が打ちのめされて肩を落とす。

「ふふん、京子ちゃんがいくらお勉強を頑張ってもしょせんはわたしと同じ程度の未来が待っているだけね。それならなにもしてないわたしのほうが得な人生が送れるってわけよ。京子ちゃんの努力は無駄な努力ってわけね」

 高らかに鼻を鳴らしながらまた立つ。京子を見下ろして優越感に浸っていた。

「ぐ……で、でも、そんなことないわよ、きっと」

 腹立ちながらとにかく口だけでは屈服しない。意志の強さだけで立ち上がるとまりのに並んだ。

「ううん、それどころかもしかしたらわたしのほうがいい人生を送れるかもしれないわ。だってかわいくなればそれだけみんなからちやほやしてもらえるもん。お勉強できるのもいいけど、とっつきにくいと思われて誰も近寄ってきてくれないんなら一人ぼっちになっちゃうんじゃない。それよりみんなと一緒のほうがいいよ」

「な……そんなことないわよ! まりのなんてどうせつまらない人間同士で集まるだけでしょ⁉ 私はそんなことにならないもの」

「つ、つまらないなんてなによ! 充実した人生送るもん!」

 すっかり子供のケンカになってしまって言いあうばかりだった。はながつぶやく。

「どっちでもいいじゃん。自分の人生なんだから」

 するとみかこも同意して、

「そうですわ。まりのさんはかわいらしくなられますし、京子さんも内面が磨かれます。どちらも無駄はありませんわよ」

『…………』

 横からすべてを持っている人間にはげまされても、どうにも納得いかない二人だった。

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