25:ジン・バトラーの朝の応接間
「フレ・・・アイオス、なに言ってるんだよ」
<おいおい、どうした?>という軽い口調でおどけたようにジンはフレデリックに話しかけるが、内心冷や汗がひどい。
なぜなら、フレデリックが優秀なことを知っているからだ。
つまり、この目の前のアルフレッド・ブラッドレイと名乗った人物は
突然の王族の登場に焦らない元平民のほうがおかしい。
ジンは10歳まで孤児院で暮らしていたのだから。
そのうえ、王弟殿下が「冒険者のアルフレッド・ブラッドレイ」と名乗ったのにも関わらず、フレデリックはそれを無視して「アルフォンス殿下」と言っているのだから質が悪い。
頭のいいフレデリックのことだから、何か策があって言っているのかもしれないが、自分の正体を隠したい王弟殿下に喧嘩を売っているようなものだ。
ただ、講師に会って昨日の話を聞くだけだろうと思って、軽い気持ちでついてきたジンとしては、「もう勘弁してくれ。やっぱついてくるんじゃなかった」状態といえる。
「・・・座れ」
「ほれ、見たことか!」というように、さっきまで不敵な笑みを浮かべていたアルフォンス(アルフレッド)も機嫌が悪そうにして、ジンとフレデリックに座るよう促した。
「御前失礼いたします」
そう言って、優雅にほほえみをたたえながら、殿下の前のソファーに腰掛けるフレデリック。
そうして、彼はジンを見上げた。
目線で「早く座るよう」促してくる。
今までなら、公爵子息とその側近候補という関係で、ソファに隣り合って座るなんてことはあり得なかったが、いまは違う。
ジンもフレデリックも、(フレデリックのふりをする)レティシアの側近候補といういわば対等な立場なのだから。
思わず、(座りたくねぇ!)と思ってしまった。
そしてその感情が表に出すぎたのだろう。
ジンは思わず、すがるようにフレデリックに声をかけてしまった。
アイオスと名乗る彼が<本物のフレデリック>であると、王族のアルフォンス殿下にバレるわけにはいかないにも関わらず・・・・・・。
「・・・・フレド様」
・・・・と。
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