94「最高のメンバー」②
「待たせたな、レダ、エンジー、そして勇者ナオミよ」
漆黒の青年からレダたちの名前が呼ばれる。
「俺もいるぜ」
「――テックスさん!?」
「どうして!?」
木々の影から武装した冒険者テックスまで現れ、レダとエンジーが目を剥いた。
「性分でな。勝てない化け物だとわかっていても、レダとエンジー、ナオミ嬢ちゃんが戦い出したなんて知ったら、いてもたってもいられねえわけよ」
「だからって」
「安心しな。効くかどうかはしらねえが、対災厄の獣ようの武器をもらったんでな」
「誰から」
「あっちの旦那からさ」
テックスがいたずらっ子な顔をして、ナオミを抱き抱えて降りてくる漆黒の青年を顎で差した。
「予定よりもだいぶ早く戦いが始まってしまったので、増援は間に合わなかったが武器はある。とはいえ、レダたちには必要はないが、我とテックスが最低限戦うくらいの役には立つだろう」
「――まさかとは思ったけど、ノワール?」
「正解だ」
漆黒の青年は笑った。
「こんなこともあろうかと思い、力を溜めていたのだ。とはいえ、最初に力を使うことになる相手が災厄の獣とは思いもしなかったがな。正直、この姿になるだけで限界だ」
「――ありがとうなのだ。助かったのだ」
漆黒の青年――ノワールの腕から降りたナオミは、再び聖剣を構えた。
「話をしたいところだが、ほら、来るぞ」
ノワールが指差すと、災厄の獣が怒りの形相を浮かべてこちらを睨んでいた。
「勇者ナオミを殺せなかったことがよほど不満と見た。面倒臭いことになると、レダ、エンジー、テックス、構えろ」
言われるままそれぞれ構えた。
すると、獣が流した傷が泡だった。
「なにが」
起きているのか、と問うよりも早く答えは出た。
獣の傷口から、モンスターが生まれ落ちていくのだ。
「すべてのモンスターが災厄の獣から生まれてくるわけではないが、あれが母親であるモンスターもいる。大体が、例外なく強い。覚悟して戦うといい」
テックスとノワールが援軍に来てくれた理由を理解した。
災厄の獣だけでも持て余しているのに、モンスターまでうじゃうじゃと湧いてきたらキリがない。
「ひとつ、誤解を解いておこう。災厄の獣は恐ろしいが、強いわけではない。知性は人並みにあるが、飢えと遊び心に狂っている。まともな思考はしていない。ならば、なぜ災厄などと言われているかとすれば、倒す手立てがないからだ。勇者の聖剣でも殺しきれないゆえに、恐ろしい」
その通りだ、と思う。
「だが、ここに希望があった。レダ、エンジー、君たちだ」
「――え?」
「――それって」
ノワールは獣から目を離さずに言葉を続けた。
「災厄の獣の弱点は聖属性だ。さらに言うならば、聖属性の力が込められた回復魔術だ」
ノワール以外が絶句した。
「今まで、両者を支える者がいなかった。なので検証はできていないが、確証はある。奴に回復魔術はダメージを与えることは確認している。ならば、聖属性の込められた回復魔術ならばどうだ?」
ノワールは魔王のように笑った。
「大ダメージになるだろう」
〜〜あとがき〜〜
災厄の獣は、聖、癒し、などを嫌います。
それが弱点です。
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