18「争いの理由」①





 人間と魔族は長い時間を争っている。

 戦いのきっかけをレダは知らない。

 その理由はいくつもあるからだ。


 ――例えば、魔王が一国の姫を攫った。

 ――例えば、魔族が人間を殺戮した。

 ――例えば、領地の奪い合いになった。

 ――例えば、魔族が人間に呪いをかけた。


 ――果てには、魔族のせいで人間に治癒士が少なくなった。


 などがある。

 どれも眉唾物であり、確証がない。

 レダも馬鹿ではないので、そんな噂程度のことをいちいち間に受けたりしなかった。


 しかし、人間の中には、噂を事実として鵜呑みにしてしまう者もいる。


 その傾向が強いのが、冒険者や貴族にある。

 逆に、よほど愚かではない限り、王族でこれらの噂を信じている者はいない。


 ――ならば、本当に理由はなんだ?


 と、考えるも、一介の冒険者でしかなかったレダが知らなくても困ることはない。

 治癒士として働いている今も、考えたことはなかった。


 だが、家族に元魔王がいて、魔王と倒した勇者がいて、そして四天王のひとりが目の前にいる。

 さすがのレダも、争いの理由が気になる。


「人間と魔族が争わなくなることは賛成だよ」

「ありがとうございます。人間の中に、レダ殿のような意見を持ってくださる方がいて安堵しました」

「……みんな戦いたくはないと思うんだけど」

「そうですか? 魔族の中には戦いを継続したい者は多いのですが」

「そ、そうですか」


 もしかすると、人間と魔族の問題は根深いと思われる。


「無知で申し訳ないんだけど、俺は人間と魔族が争う理由を知らないんだ。よかったら教えてくれないかな?」


 レダが打ち明けると、ノワールもシェイプも嫌な顔をせずに「もちろん」と返事をくれた。


「レダの生まれるずっと前から我らと人間は争っている」

「事情を知らない人間がいることは仕方がないことです。魔族にも、最近生まれた子供は事情を知らぬに、なんとなくで人間を敵視してしまうので困っています」

「……それは人間も同じかな。申し訳ない」

「いいえ、上の世代がそう教育すれば仕方がないことです」


 シェイプがレダをフォローしてくれた。

 続いて、魔族の頂点に君臨し、長年人間と戦い続けた元魔王の口から語られる。




「――実を言うと我もよくわからん」

「――えええええええええっ!?」





 〜〜あとがき〜〜

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