9「家族との時間」②
右手にミナ、左手にルナと手を繋いだレダは、街に出かけようと屋敷の玄関ホールにいた。
途中、すれ違う人たちに「いってらっしゃい、先生!」「お気をつけて!」「何か困ったら声をかけてくださいね!」と言われ、レダたちも礼を言う。
怪我人はすべて治し、あとは病人たちだけが回復を待つ状況だが、病人も清潔な寝床と栄養のある食事のおかげで順調に回復に向かっていた。
そのおかげか、すれ違った人々はみんな笑顔だ。
「みんな元気になってよかったね」
「ああ――本当によかったよ」
ミナがはにかむと、レダもつられて笑みを浮かべる。
救えなかった人がゼロではないが、多くの人を救えたことも事実だ。
レダは、自分がアムルスで培ってきたことを、ユーヴィンで発揮できたことに手応えを感じていた。
いつものレダならば、救えなかった人を考えてうじうじしていただろうが、そういうのはやめた。
レダは全力を持って治癒をした。
その上で救えた人たちのために、支えてくれた人たちのために胸を張ると決めていたのだ。
「よかったわね、パパぁ」
「うん。ミナ、ルナ。ありがとう」
しっかり手を握って屋敷から出ると、燦々とした光が三人を出迎えてくれた。
少し疲労が残っているレダには、太陽が眩しいが、元気なミナとルナには日の光がよく似合う。
「よう、レダ。ミナとルナも!」
「あ、ローゼスおばさん! こんにちは!」
「ぐはっ、地味にくるな! 否定はしないけど、できないけど、こう胸に刺さるものがある」
数人の冒険者と一緒に素振りをしていたローゼスがレダに気づき手を振るも、ミナの「おばさん」呼びに、膝をついた。
他の冒険者も気まずそうな顔をしている。
慰めの声をかけたいが、ローゼスの年齢は三十代なので「おばさん」といえば「おばさん」でるため適切な言葉が出てこないようだ。
「み、ミナ……せめてお姉さんと言ってあげて」
「うん?」
レダがさりげなくフォローしようとするが、ミナは首を傾げるだけ。
「……子供の純粋さって、時に暴力よね」
ルナの呟きに、冒険者たちが「うん、うん」と頷き、ローゼスがぱたり、と倒れた。
〜〜あとがき〜〜
家族サービス昼の部です!
コミック最新7巻が13日に発売いたしました!
ぜひお読みいただけると嬉しいです! 何卒よろしくお願いいたします!
双葉社がうがうモンスター様HP・アプリにてコミカライズ最新話もお読みいただけますので、よろしくお願いいたします。
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