7「死者蘇生」③
「――というわけだ、レダよ。君が誤った使い方をするとは思わないし、仮にしたとしても止めてくれる人間が傍にいることも知っている。だが、蘇生魔術は扱いを間違えると、いずれ破滅を招く可能性がある」
「そう、だね」
「もちろん、過去の人間が愚かなだけであり、現在を生きる人間たちは賢いと信じたい。しかし、治癒士たちの今までを見ていると、軽々しく問題ないとは口が裂けても言えないのだよ」
ノワールの言葉は実に説得力があった。
本当に数ヶ月前まで、治癒士が治癒を施すには高額な治療費が請求された。
その治療費を払えず、亡くなった者も多い。
レダの存在、アマンダの活動によって、少しずつ改善してきてはいるが、まだ完璧に治癒士が民に寄り添えていると断言できない。
そんな状況下で死者蘇生などの魔術が使えるとなれば、仮にレダしか使えなかったとしても、治癒士の選民思想が強くなる可能性がある。
「俺は誰かに死者蘇生のことを伝える気はなかったけど、俺自身も写本には目を通さないようにしておくよ」
「それがいいわ」
レダは死者蘇生の危険性を理解し、封じることを決めた。
アストリットが、彼の手に手を重ね肯定する。
「待ちたまえ。レダは少し誤解している。私は、死者蘇生を手に入れるなとは言っていないのだよ」
「え?」
「危険性は訴えたが、使い方を謝らなければいいのだ。そもそも、レダに使えるかどうかもわからぬ。知識だけあっても、使えなければ、余計なことを心配しても仕方がない。無論、伝えないように気をつける必要があるが、ね」
ノワールはレダにウインクをする。
「もし、もしだが、仮にレダが死者蘇生を支えるほどの素質を持っているのなら、先人の魔術を継承し、正しく使うこともひとつの選択肢であると思える。こればかりは、君が決めることではあるかな」
ただ、とノワールは続けた。
「個人的なことを言わせてもらうと、君の素敵な家族に万が一の時があったら……ひとつの選択肢が大きくその後を決めることとなる。無論、万が一などなければいいが、私がそうであったように、何が起きるのかわからないのが生なのだからね」
「――ありがとう、ノワール」
「ふふっ。構わないさ。私も家族の一員として、力になれたのであればよかった。個人的にも、死者蘇生は私の魔王時代の研究テーマのひとつだったので興味深くもあるのだがね」
極力、話が暗くならないように気を遣いながら話をしてくれたノワールのおかげで、レダは冷静さを取り戻すことができた。
ここ数日、多くのことがあって疲労が溜まっている。
そんな中、難しいことを考えてもいい判断はできない。
「アムルスに戻ってからちゃんと考えるよ」
そういう結論となった。
〜〜あとがき〜〜
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