忘却の過去(パート3)
かばんは日ノ出署と合同でこの事件を捜査する事を決めた。
「なかなか手掛かりが掴めませんねぇ...。
忍者か何かじゃないんですか...?犯人」
ダチョウが言った。
同時刻の近辺を聞き込んだり、カメラを解析したりしたがそれらしき情報が得られない。
かばんはずっと頭の中で推理していた。
(単なる不良グループであれば、何処かで必ず“ボロ”を出すはず...。それが無いという事は犯罪に手慣れた人達...)
「ダチョウさん...、この管轄で暴力団の事務所とかありませんか」
その質問を聞いた彼女は。
「今はそんな物騒なモノありませんよ!
なんせ20年ほど前に私達と公安部が共同で摘発しましたから!」
(20年前...、僕が中央にいた時か...)
「
「どうして摘発に乗り切ったんですか?」
「集団で違法薬物の売買を行ってたからですよ。ま、そのおかげで神狼会は解散しましたけどねぇ」
「....ダチョウさん、もしかしたら、その組の“残党”、出所してませんか?」
「え?」
間の抜けた声を出した。
「また活動を開始しているかもしれません。
活動資金をかき集める為に襲った、と考えてもおかしくはないはずです」
「...まさか」
「20年前に検挙された組員の動向を、調べてください」
***
カラカルの失われた犯行当時の記憶は戻らなかったが、かばんとドールによる必死の捜査のおかげでカラカルの無罪はほぼ確定した。
しかし、彼女には、真実を伝えなくてはいけなかった。
ドールはカラカルに、“真実”を伝えた。
「友達も...、約束も...、何も守れなかった...」
涙ぐむカラカルの肩をリョコウバトは抱き寄せて言った。
「何言ってるの!あなたは最後まで守ろうとした...!そうでしょう!あなたが相手を怖じ気付かせなければ、私だって命を奪われていた」
「.....」
「あなたは警察官でしょ...?
みんなのヒーローなんだからっ...。
犯人を捕まえて、あの時みたいに、大切な人を守って...」
「カラカルさんのこと知れて、良かったと思います。私も...、同じ様になりたいって、思いました」
「彼女は、正義感も優しさも兼ね備えている。
警官のあるべき、理想的な姿。だけど、本人はその性格のせいで自分を責めやすく、心労も溜まりやすい」
かばんが何を言いたいのか、ドールは理解した。
「...かばんさん、犯人捕まえましょう」
***
「...それで、犯人は見つけられたの?」
ハクトウワシは尋ねた。
「僕達もダチョウさんも、一生懸命探しました。ですけど、まるで全ての痕跡を波に消されたように、何も見つからなかった。カラカルも友達の為に、捜査しましたが...。後天性の記憶障害を起こして事件前後の記憶がスッと無くなってしまって。何も進捗のないままです」
「....色んな事件を解決したアナタでさえも解決できないなんて...」
「僕は特別じゃないですよ...。ただのヒトですから」
かばんは疲れた様に伸びをした。
「これから、どうするの。まだ、オオアルマジロは納得していないようだけど」
「....ハクトウさん。僕の頼み、聞いてくれませんか?」
数日後。
京州警察署内で記者会見が開かれた。
『この度は深くお詫び申し上げます』
テレビには、頭を下げるピーチパンサー署長と
かばんの姿があった。
2年前の『JPR車掌銃殺事件』の犯人を隠蔽したことを認めたのだ。
今回取り沙汰されている『アナウンサー殺人事件』の犯人に対し、でっち上げなどの不正を行っていないとした。しかし、中でも驚いたのは隠蔽の工作を刑事課課長であるかばんが行ったと発表したこと。
大衆に向かい、彼女は土下座をしたのだった。
かばんは懲戒免職となる事が決まった。
***
『今日のニュースは見たか?
あの人はやっぱり、やることが昔から変わってない。私が三課課長をやっていた時からだ。噂は何度も聞いた。特指の異端児の話は。これから、犯人隠匿の罪だったりねえ。その話は検察に任せればいいわ。取り敢えずハクトウ、逐一報告ありがとう。もう中央に戻ってきていい。あなたも京州にいれば異常者になる』
「中央へ戻るのはお断りします。総監」
『は?エイプリルフールはまだ先だぞ?』
「私には“やり残した事”があります。
それに、京州署は“異常じゃない《ノーアブノーマル》”ですから」
『ハクトウ、まさかあなた...』
「...グッドラック」
電話を切った。
記者会見の翌日。
京州署には多くの報道陣が正面にいたので、ハクトウは裏口から署内に入った。
刑事課には、サーバル、カラカル、ドールもいたが彼女達は神妙な面持ちだった。
「みんな、聞いて」
ハクトウは机を叩き立ち上がった。
「かばんはみんなを守ったの。みんなを守る為に英断を下した。彼女の
これからは私がリーダーになる、よろしく」
突然の発表に3人は唖然としていた。
***
「クビにされちゃったって聞きましたよ?
とても優秀だったのに残念です...」
彼女が皮肉を言っているという事は一発でわかった。
「アドさんの方が一枚上手でしたね。
オオアルマジロさんに情報をリークするとは、僕も想像出来ませんよ」
「フフッ...、かばん先輩がこっちに来たら真っ先にお友達になりますよ!
“ヘイトモ”にね」
「入れたら、その時はお願いします」
「...逃げられると?」
「僕は“普通じゃない”ですから」
かばんは余裕綽々と面会室を去った。
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