悪役令嬢は謝罪したい

ぽんかん

自業自得な悪役令嬢










その日は、猛烈にイライラしていた。







大好きな王子様には構ってもらえず、もうすぐ夏本番という暑さにやられ、とにかくイライラしていた。


だから、使用人に当たり散らしまくった。

やる事なす事全てにケチをつけては、「お父様に言いつけますわよ」と言って脅し、言うことを聞かせる。

いつもの常套手段だった。





きっと、バチが当たったんだろう。




私は、使用人をいびりながら屋敷内をズカズカと歩いていると、何も無いところで躓いた。運悪く頭を打ち付け、そのまま気絶。



そして、今に至るーー








「無様にも程があるわ」





私は広いベッドの上で呟いた






自業自得という言葉がこれ程似合う者はいない。使用人もさぞや「ざまぁ」と思った事だろう。

それ程に、このお嬢様はどうにもならない人物だったのだ。







「悪役令嬢」




1番に浮かんだ言葉だった









よくある設定のよくある乙女ゲーム。

タイトルも思い出せないくらいありきたりなゲームだったと思う。



庶民のヒロインが、希少な光属性の魔法を使えるという事で貴族ばかりが通う魔法学園に特待生として入学する。そして攻略者と出会い、様々な困難を乗り越えて行く。最後には、たった一人の運命の相手と結ばれてハッピーエンド。




そんな感じだったと思う





そして、乙女ゲームには欠かせない「悪役令嬢」それこそがこの私セリア・モーガスだ。



攻略者の1人、この国の第1王子リカルド・ファーマンの婚約者で公爵令嬢という圧倒的地位を確立しているご令嬢。

6歳のころに母親を亡くしており、一人娘を心配した父親はそれはもうデロデロに甘やかした。それはもう、デロデロに。



そんなデロデロ生活を送ること9年、15歳になった私セリア・モーガスは、見事に傍若無人な我儘モンスターに立派に成長しましたとさ。




本当に傍迷惑な話だ。




後に前世を思い出す私の気持ちにもなってくれ、今までの自分。








ーーそう、本当に困った事に、私はどうやら前世というものを思い出したようです。







ぼんやりと、ゲームの事とか自分は成人した女性だったとか、細かい所はよく分からないけど、自分が悪役令嬢だということだけは、よく分かった。




ヒロインに嫉妬して、虐めに虐め抜いて最後には断罪される、それが悪役令嬢。

断罪といえば、国外追放に処刑、娼館に売られるといったものがあるが、死ぬのは勿論嫌だけど、娼館に売られるだなんて女として辛すぎる。それなら死んだ方がまだマシだ。これだけは何としても回避しなければいけない。





しかし、運が良いのか悪いのか、前世を思い出せたものの私はもう15歳。

この数年間で、あらゆる人々に迷惑を掛け、我儘放題。肝心の王子様には四六時中付きまとい、無理やり手に入れた婚約者という立場を使いやりたい放題。物凄く嫌われているだろう。





だけど、1つだけラッキーなのが、まだヒロインを虐めてはいないのだ。




ヒロインとリカルド王子は私の1つ上の16歳。2人とも魔法学園に通っている。



魔法学園は16歳から通うことができ、そこから4年間、魔法以外にもこれから貴族の社交界にでる者として、様々な事を学ぶ場所だ。




そして、以上の事から分かるように、悪役令嬢である私セリア・モーガスはまだ15歳で学園に通えるのは来年からのため、王子に会うためだけに学園にお仕掛けては王子にウザがられていたのが日常だった。



倒れてから1週間経つ今もお見舞いに現れないあたり、本当に嫌われているんだろうなぁ…。




そんな中、ヒロインのリリア・フォレスターがリカルド王子とよくいるのを見かけては、嫉妬で暴言を吐いて王子に疎まれるという負の連鎖を切り返していた。





国の王子が重要な光属性のヒロインといるのは、当たり前だろうに、それにも気付かないくらいセリアは恋に盲目だった。





でも、まだ挽回のチャンスはある!




セリアはまだ暴言を吐く程度で、実際に虐める行動には出てない。これからヒロインにも王子にも謝って、潔く身を引いて2人の恋を応援すれば、まだ断罪回避は出来るかもしれない!





とりあえず、今は夏季休暇中、ヒロインは勉強のためお城に王子といるだろうから、お城に行って2人にまずは謝ろう。





そう決めて、私は早速お城に向かった。














































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