見た目は最弱、能力は最強!

すみ 小桜

第1話》運は味方をしていなかった

 ぎゃー!!

 と言う断末魔をあげ、目の前のボスは消えて去った。


 「ふ。決まった」


 俺以外の仲間は、俺の周りに倒れている。俺は、右手を突き出し最後の切り札の魔法を放ったのだ。それであっけなく、ボスを倒した!


 「いやいや、決まってないから! そのポーズじゃねぇ」


 起き上がった剣士のママルさんが、俺の突き出した手を指差す。そこは、スルーして欲しかった。

 俺の右手は、人差し指と小指がピンと立ち、中指と薬指は親指とくっついている。つまりは、キツネの形だ。

 これには、ちゃんと理由がある。ふか~い理由がね!


 「危なく運が減る所だったぜ。ありがとうな」


 起き上がった他の人達はお礼を言うも、ママルさんと同じ意見らしく言いはしないが格好良くないと言う顔つきだ。

 だから、こうしないといけない深い理由があるんだってば!



 □ ◇ □ ◇ □



 今はVRゲームはブーム真っ只中。MMOだけじゃなく色んなジャンルが登場している。その中に、サイコロゲームのジャンルが発売された。

 俺は、すごろくの様なものだろうと、友達を誘って初めてみる事に。でも思っていたのとは違った。

 サイコロを振って色々決めるけど、思っていたのとは違ったのだ――。

 その名も『ダイスラッククエスト』。


 ――初めまして。まずは、お名前を教えてください。


 ゲームを始めると、そう声が聞こえた。

 びっくりしたなぁ、もう。

 周りは神殿の様な広い場所。そこに俺一人ぽつんといて、声が聞こえれば驚く。


 「えっと……」


 ――エットさんですね。


 はぁ?

 俺は、あらかじめ決めてあった名前を言おうと、前置きの様に『えっと……』言っただけで、それ名前じゃないから!


 ――では、足元のダイスを振って下さい。


 「それ名前じゃ……え?」


 足元を見るといつの間にか、サイコロらしきものがあった。六面体ではない。サッカーボールぐらいの大きさのサイコロを両手で拾った。

 クルクル回し数字を確認すると、10まである。


 ――まず、ステータスを決めましょう。


 サイコロを振って、ステータスを決めるのか。さすが商品名にダイスラックって入っているだけはある。


 「えい」


 とりあえず振ってみる。

 サイコロは、ころころ転がりなんと! 10が出た!


 「おぉ! 10だ!」


 運は、俺に味方してるぜ。


 ――次のダイスを振る前に、ステータスの事をお話しします。左手を開き、目の前でスライドさせて下さい。ステータスが表示されます。


 「こうか?」


 俺は言われた通り、左手を右から左にスライドさせた。すると、ステータスが表示される。


□――――――――――――――――――――□

 名 前:エット

 レベル:1

 体 力:100

 攻撃力:100

 魔 力:100

 素早さ:100

 ラック:100

□――――――――――――――――――――□


 おぉ、全部100だ。

 ……うん? あ! そうだ。名前!


 「あの名前なんだけど、変えられませんか?」


 ――名前は、ダイスを振ると決定され変える事は出来ません。


 だぁ!!

 それを先に言ってくれよ!

 しかたがない。これでいくか。はぁ……。


 ――説明を続けても宜しいでしょうか?


 「あ、はい。どうぞ」


 ――今表示されているステータスは、基本値です。これから足元にあるもう一つのダイスを振って頂きます。


 足元を見ると、今度は六面体のサイコロがある。でも、書かれているのは数字ではない。手に取って見てみると、記号が書かれている。

 +、×、÷

 +が四面、×と÷が一面ずつ。

 何か嫌な予感がするんだけど……。


 ――そのサイコロの出た記号を使って、先ほどの出た数字『10』で計算した答えが、体力の数値になります。例えば、『+』が出た場合は、100+10で『110』になります。


 それってつまり、×が出れば1,000だけど÷が出れば10って事じゃないか!

 いや大丈夫だ。+がでる確率は50%以上だ。高望みはしない。+でいい!


 「てやぁ!」


 俺は、気合を入れてサイコロを投げた。


 「だぁ!!」


 俺は、膝に手をつき項垂れる。

 なんで、÷なんだぁ!!

 サイコロの目は、無情にも六分の一の確率で÷がでた。それなら×が出ろよ!

 運は、俺に味方などしていなかった――。

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