モンスターアプリ

にぃつな

第1話

 トーキ地方に引っ越ししてきた主人公の少年・リュカは、幼いころから友達はいなかった。引っ込み思案でコミュニケーション不足から自ら声をかけることも返事することもなかったため、ネクラと思われて過ごしてきた。


 そんな中、唯一友達だったのは、現実には存在しない妄想内の架空生物シグマの存在だった。


 白と黒のラインが引かれ、羊のようにふさふさの体毛。顔は子熊のようでやや可愛らしい小太りだった。アニメチックのような見た目で、女の子たちをメロメロにし、人を寄せ付けてくれる。


 そんな妄想を抱きながら、その子と遊びまわす日々を思い描いていた。


 10才を迎えたある日、リュカは家族とともにトーキ地方に引っ越した。

 そこは山々に囲まれた場所で、人気は都会と比べれば少ないところだった。


 年齢的に友達もできず、ひとりぼっちで部屋の中で過ごすリュカを心配した両親は医者の勧めで、トーキ地方へ引っ越すことを決めたのだった。


 漫画家だった父は、リュカが思い描く想像上のシグマを元に絵を描き、シグマに与えたことがすべての始まりだった。


 二階建ての家に引っ越ししたリュカは、父からもらったシグマの絵とともに、自分の部屋を紹介するように振舞った。


 それを見ていた母は複雑そうな顔をし、父は誇らしげに笑っていた。


 ある日のことだった。

 父からもらった携帯にインストールした覚えがないゲーム【モンスターゲット】がホーム画面に表示してあった。


 不信に思い、そのアプリゲームを削除した。

 ベッドに横たわり、瞼を閉じた。明日も、シグマと一緒に外で冒険しようと約束して…。


 次の日、消したはずのアプリが再びインストールされていた。

 ホーム画面ではなくログイン中の画面が表示されている。


「昨日、消したはずのなのに…」


 新手の詐欺か悪意アプリかと思い、削除しようと手を伸ばすが、あるアイコンキャラクターに思わず目が釘付けになる。


「うそ…だろ? しぐま!?」


 ログイン中の画面には【シグマ】と書かれたキャラクター名とそのキャラクターが表示してあった。名前の横には【出現中】の文字が点滅している。


 モゾモゾと足元に変な感触が伝わった。

 足元の掛布団に妙にふっくらと膨らんでいる。


 掛け布団をめくると、そこには存在しないはずだった妄想生物シグマの姿があった――。

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る