未来には絶望を、過去には温もりを

山居 藍

雲が裂けて

歩いてきた砂浜に

点々とのこる足跡が愛しい


あんなに重そうな厚い雲が

何故空に浮いていられるのだろう


冷たい風が肌を切り裂いていく


時間もわからない

端が焼けた雲の黄色

あれは朝に焼かれたの

それとも夕に焼かれたの


どちらでも同じこと

ただ、雲が増えるか 闇に閉ざされるか

それだけが違う どうでもいいこと


どっちだって

私を何も変えはしない


雲が裂けて 一筋の光がどこかを照らしている

あの光が照らす先には

今まさに命を終えた人がいるらしい

その人の魂が空に昇るから

雲が裂けているのだという


それなら

こんな惨めな私のためにも

いつか空は雲を裂いてくれるのだろうか


足跡は波にさらわれ

私が少しずつ削られていく


進めない

帰れない

昇れない

還れない

  • Twitterで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る