一匹狼

バイクに乗るのが好きだ

周りは不良とかカッコいいとか言うけれど

俺は自分用に自分でメンテナンスした自分だけのバイクが自慢で、無駄なレッテルを貼られるのが程々嫌だったが、親父もバイクが好きだし、そこから俺のバイク好きは始まったし、俺自身の性格も相待って、やたら「バイクに乗れる仲間」を求める奴らが嫌いで自宅以外で人と話すのは嫌いだった。

だけれども

俺がバイクを乗り回している時、俺は偶然、風船かざふねと担任が歩いている姿を見てしまった

又、風船が担任に抱きつく姿も

ドラマみたいなものがあるのかと、じっと見てしまった。そうしたら風船は俺に気づき、逃げるどころか手を振って、こちらに来た

「◾️◾️◾️くんのバイクかっこいー!」

またバイクかよ、と思っていると

「確か◾️◾️◾️は自分でメンテナンスしてるんだって? すごいなあ」と担任が言った

そこは説教とか事故に気をつけろとか、そういうのだろ?

「こうっ峠のカーブを曲がる時、ぐぐぐってすふの?」

「風船、夢の見過ぎだ。あれはな、テレビだから格好良く見せてるんだ。大体のバイクは車体を傾けやするけど、あれほどじゃない」

「なーんだ。でもかっこいー! この、えーと、色?」

「塗装」

「も! 自分でやってるの!?」

その間、俺は相槌しか打てなかった

初めて自分と相棒を見てもらえた気がした

嬉しかったんだ

だから守れなかったのが許せない

たかが俺と歩いていた、話していた、そんな下らないことで苛め始めた奴らを

自分を

アイツらは隠れて風船を虐めていた

気づいた時には遅くて、担任に言おう、と言うと風船は首を振って「言わないで」と小さい声で呟いた

「私、先生が好きなの。付き合ってるの。でね、先生がね、大学生になったらって言うの、だから、ね」

『言わないで』

守れなかった

認めてくれた二人なのに

遠くで「ヘルメットはつけろよー」言いながら去る二人の姿が目に浮かぶ

その後は、できるだけ側にいた

そうすればアイツらの苛めは柔らかくなる

どこかに行こうとするならついていった

それしか出来なかった

思えば俺の家に連れ帰るなり、担任に言えばよかった。恨まれても

先生は風船を受け止めるし、俺だって二人の味方になって喧嘩すればよかった

後になって後悔する。そんな言葉ばかりが浮かぶ。先生は俺を恨んでいるだろう。俺もクラスの奴らを恨んで殺した

刺した感触、突き落とした力、そんな手でバイクを転がして、あと一人

コイツを殺して俺も死ぬ

先生に報告がいく

あの二人には悪いが死んでもらう

地獄には俺が行く

だから、先生と風船は一緒に空へ

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