同担拒否にゃ!?!?
夕方。
町内のスピーカーから早よ帰れソングが流れ出す頃。
「カルム兄、マオちゃん。帰る時間だよ」
少し離れた所にいたガルレイド先輩が、ニャアたちに近寄ってきてそう言った。
それと同時に、集まっていた猫たちも蜘蛛の子を散らすように消えていく。
「…………」
「ゴメンね、カルム兄。やっぱり動物には嫌われるなぁ」
責めるようなカルム先輩の視線に、ガルレイド先輩は頬をかいた。
「ま、まあ猫たちが帰っちゃったから、ニャアたちも潔く帰れますし良いんじゃにゃいですかに!」
「うん、そうだね。僕たちも帰ろうか」
ガルレイド先輩が自分の荷物を背負い、カルム先輩の荷物を手渡す。
それからふと、ニャアの方を見て「あれ?」と首を傾げた。
「マオちゃんは荷物ないの?」
言われて始めて気がつく。
「そう言えば、にゃにも持たにゃいで来たにゃ!?!?」
………………
…………
……
「あれ、マオ? アンタまだ教室にいたの」
荷物を忘れてきたニャアは、グレイシア兄弟と別れて学校に戻って来ていた。
「違うにゃ! 忘れ物をしたから取りに帰っただけ!」
「ああ、なるほどね。ソルディオ先生に話しかけられてポーっとしてたから、何も持たずに出てったんでしょ?」
「にゃ、にゃぜそれを……」
「分かりやすいのよ」
ふふ、と笑いながら自分の荷物をまとめるエルラルから、湯上りの良い匂いがした。
多分部活で良い汗をかいたから、シャワーを浴びてきたんだろうにゃ。
ここは金持ち校だからシャワー完備にゃのだ。
健康的で、良い匂いのする美少女……実に素晴らしい。
「ついでに言うなら、一瞬そのまま帰ろうと思ったけど、明日リベル様の宿題を提出しなきゃいけないから、慌てて戻ってきのよね?」
「ギクリ」
完璧に読まれている……にゃと!?
まさにその通りで、リベル様の宿題をやらにゃいにゃんて恐ろしい事、とてもじゃにゃいけどできにゃいのだ!
そんにゃ事したら、ネチネチと説教される上に失点ポイントが倍プッシュ!
あれよあれよと親が呼ばれ、退学に……
おのれ、リベルめ!
「なんて顔してんのよ、宿題をやらなくて怒られるのは当然じゃない」
「それでもー厳しすぎるんにゃー!」
「それはアンタが宿題忘れるの、一度や二度じゃ済まないからでしょ」
「そそそ、そんにゃことは……!」
「はいはい」
ちゃっちゃと準備を終えたエルラルが、「行くわよ」とニャアを急かしてきた。
念のため、リベルの宿題を持ったことを三回チェックし慌てて追いかける。
宿題を忘れたおかげで、こうしてエルラルと一緒に帰れるのは不幸中の幸いってところかにゃ?
「エルラルはせっかちすぎるんだにゃ〜」にゃんて、文句を言いつつ後ろを追いかけていると、校舎から出たところでニャアの推しレーダーに引っかかるものを感じた。
「にゃにゃっ! あっちにソルディオ先生がいる気がするに!」
ニャアが察知した位置は、校舎をぐるりと回った校舎裏。ここからだと、当然見えにゃい場所だ。
「はぁ? 校内だしいたって不思議じゃな──」
エルラルは当然不審にゃ顔をしたけど、
「ちょっと挨拶してくるにゃ!」
「マオ!?」
その制止を振り切って、ニャアはタタッと校舎裏へ走る。
にゃんたって、推しを見かけたら積極的に話しかけるのが仲良くにゃるコツだからね!
単純接触効果にゃ!
だけど、
「ソルディオ先せ──」
元気よく駆けつけて、挨拶しようとしたニャアは目に写り込んだ光景に、慌てて校舎の陰に隠れた。
「にゃ、にゃんで理事長とソルディオ先生が一緒に……!?」
そう、校舎裏ではまるで密会するように理事長のエルファナ・
緩やかなカーブを描くピンクゴールドの髪、
「はぁ……やっと追いついたわ、マオ」
「エエエ、エルラル! ああ、あれ! あれ!」
「あら……流石美男美女が並ぶと様になるわね」
たしかに、エルラルの言う通り二人が並んだその光景は、とっても絵ににゃると言いようがにゃかった。
しかも会話する二人の雰囲気はどこか楽しそうで、仲睦まじく見え……
「見えにゃいにゃー!!!」
「な、なによいきなり」
「にゃんで、あの二人が、一緒に!」
「アンタ知らないの? あの二人……」
婚約してるのよ。
「同担拒否にゃっ!?!?」
そんにゃニャアの叫びも虚しく、エルラルに引きずられるように校舎裏から離れる。
「同担してるのはむしろアンタの方でしょ」
「にゃーにゃ、にゃーにゃにゃーにゃ!!」
「はいはい」
こうして、衝撃の事実を知ってモヤモヤしたままニャアはエルラルに連れ帰られたのだった……
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