第12話 炬燵
「先輩ーーー??きょー寒いですね〜〜」
「暖房つけるか」
俺はテーブルにあるリモコンに手をかける。
「先輩が温めてください〜〜。私はその方がいいんです〜〜」
「わがまま言うな。我慢しろ」
俺は軽くあしらうが、千崎の追撃は止まらない。
「先輩が冷たくて、もっと寒くなりましたーーー」
「し、しょうがないな。ちょっと待ってろ」
「?」
俺は立ち上がり、押し入れにしまってあった炬燵を取り出す。
「千崎はこたつと言うものを知っているか?こたつと言うはなー」
「あー!こたつじゃないですか!!私好きなんですよね〜!早く入りたいです!」
千崎に言葉を遮られてしまった。
「って俺の話聞けーー!ったくわかったよ。準備するから待ってろ」
炬燵を組み立て、毛布をかけて完成した。これで寒くなることはないはずだ。
「これで寒さも大丈夫だろ」
「はぁー。落ち着きます。とてもあったかいです...。先輩も早く入ってください...」
千崎が満足そうな顔をしているので炬燵を用意した甲斐があった。そして、俺も少し寒くなってきたので、千崎の右隣に入った。
身体の芯から温まってくる感覚があり、幸福感が昂る。2人とも目を細め、長年の夫婦かのように話を繰り広げる。
「あったかいなー」
「そうですね〜」
「みかん食べるかー?」
「食べますー」
「おいしいっ!」
「だろ!」
「みかんと炬燵ってなんでこんなにも合うんですかね〜」
「ここが日本だからじゃないか〜?」
「そうですね〜。このままずっと動きたくないです〜」
「俺も〜」
「先輩?」
「何だ?っっっつっうっっ!あ、、、お、おい!」
「どうしましたか?」
「足を絡めてくるな」
「ただ先輩の足が私の足にあたっただけです」
「だったらさらに上に行くな」
千崎が足の裏で徐々にモモのあたりまで来ている。
「これ以上はどうしますか??せーんぱい?」
これ以上は流石に...。でもこういう機会は少ないし、折角だったらお願いしちゃおうかな。
「お、お願いします...」
「まさか先輩〜〜??私にやってもらえると思っていたんですか〜〜??期待しちゃってたんですね〜〜。あははははっっ!!可愛いですね!あ、先輩??」
「くっっっ、だ、だと思ったよ。で、な、なんだよ」
「こんなに体が密着するのは初めてですね...」
肩と肩が触れ合い、千崎の胸が腕にあたる。
「そ、そうだな」
意識してしまうと一気に熱くなる。それに千崎が妙に色っぽく見えてしまう。
「『また、しましょうね先輩』」
耳元で囁かれたしまいには気絶してしまいそうになる。
「だからあざとすぎるんだよー!!」
俺は毎度の少し違った言葉を叫んだ。
「あ、そういえばお茶飲みたくなってきたな」
炬燵と言えばお茶は必須だろう。茶柱が立つか立たないかも楽しみだ。
「お茶あげる」
「ありがとな」
机に置かれたお茶を俺と千崎が啜る。抹茶の豊潤な香りがし、とても美味い。
「先輩、美味しいですね」
「美味いな〜」
「みかんと合いますね〜」
「合うよな〜。ってお前誰だよ!!」
お茶とさっき聞き覚えのない声がしたのはこいつのことだったのか。
「あ!唯ちゃんだ!!!」
制服の上に何故か俺のエプロンをしてやがる。勝手に使うな。
「心配だから来てやったよ。千崎」
覇気のある声で、少し強めのトーン。
「私は場所教えてないけど??」
「い、いいからそんなどうでもいいことは。千崎...。私も仲間に入れて欲しい」
どうでも良くないだろ。ストーカーかこいつは。
「いーよー」
みかんを食いながらどうでもいいかのように返事をする。
「って返事が軽すぎるわ!それにこいつ学校で千崎とつるんでいた奴だろ!何勝手に俺の部屋に来ているんだよ!」
「千崎が大好きだから」
唯という少女は凛として顔が整っていて、美少女。髪は後ろに結んでいて、黒髪だ。それにグループのリーダーかのような佇まいにカッコ良さを覚えてしまう。ほのかな甘い香りがさらに部屋中に漂う。
「理由になってない!千崎は良いのか??」
「いーよー」
「へいへい。わかったよ」
千崎がそういうのなら仕方ないか。
「ありがと。じゃあ、今からエロゲやるから」
「はぁーーーーーーーーーーーー!!!」
波乱万丈な新たな日常が始まった。
「あ、唯一ちゃん。私と先輩とのやりとりを邪魔したり、勝手にゲームとかアニメを見たら絶交だからね〜〜」
「は、はい...」
唯という少女は千崎には逆らえないらしい。それに怖いわ千崎。
次の話は前回の話の続きになります。
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