第9話 学校
今日は学校ということで千崎と登校している。まぁ、同じ部屋で寝たのだから一緒に行くのは当たり前のことで。
学校終わったら千崎はそのまま帰るので今日だけはゆっくりと1人の時間を楽しめる。
「先輩?どうしましたか?ぼーっとして。私と一緒に登校出来るのが嬉しくないんですか??」
私と一緒にいることが当然嬉しいかのように聞いてくる。当然嬉しいが。
「いや、少し考え事をしててな」
「むー。私が居るのに考え事って...。先輩酷いですね」
頬を膨らませ、いじける千崎。
「もしかしてせんぱーーーぃ??私が今日帰るから落ち込んでいるんですかー??」
「ちげーよ。帰ったら何しようか考えていたんだ」
「先輩がそこまではっきりと否定することって私初めて見たので、少し寂しいです」
「最近、慣れてきたからな」
「なっ!先輩。ならこれはどうですか??」
「えっっ」
「『今日は私の帰った後の部屋で自分を満たしてして下さい』」
千崎が耳元で囁きかけてくる。甘い吐息がかかり、千崎はしてやったりという顔で見てくる。
「なっっ」
「えへへ。先輩〜〜。動揺してますよ??まさか本当にやるんですか??」
「ち、違うし。急に来るから驚いただけだし」
「本当ですか〜〜??私が居た3日間の出来事を振り返ってすっごく気持ちいいことをやるんですよね〜?」
千崎がニヤつきながらそう呟く。
「や、やらねーよ」
「あはははっっ。先輩、顔赤すぎですよ〜〜。やっぱりやるんですね」
「だから違うって」
「先輩?次は私に動揺しなくなる練習が必要ですね?」
「だったら最初からやるなーーーーーー!!!」
千崎はその後も俺をからかうのだった。
そして、俺たちは校門を潜るとき、周りがソワソワしているのに気付いた。
「な、なんであいつが千崎様と居るんだよ」
「な、何かの間違いだろ?みんなの千崎様だぞ?」
「確かにそうだな。あんなパッとしないやつと千崎様じゃ、合わないしな」
という風に千崎のファンクラブの奴らが俺に侮辱的な視線を向ける。すると、周りに居た女子生徒の1人が千崎に声をかけた。
「千崎?誰そいつ」
俺たちが登校するのは初めてなことで、学年も違うので学校ではほとんど話さない。まぁ、千崎は週一登校だし。
「凪沙ちゃん久しぶりーーー!!!この人は私の先輩なの」
「えっ...」
唯は俺を見るや否や拒絶した反応を見せる。俺と千崎は全く別の世界の人間だ。部屋ではあんな風なやりとりが出来るが、一歩外を出ると俺の醜さを自覚してしまう。みんなから好意的な目で見られる千崎。ヲタクという共通の趣味を持たなければ出会わなかった存在だ。だから、今は拒絶してくれ千崎。
「だからくれぐれもそんな口の聞き方はやめてね?」
千崎は学校で俺を拒絶しなかった。自分の今の地位を揺るがすかもしれないことをあっさりと千崎は言ってのけたのだ。
「でも...千崎とじゃ...」
「ね??」
千崎に圧倒したのか唯という少女は押し止まった。だが、そのやりとりを聞いていた周りの生徒たちがまたソワソワしだした。
「千崎様、まさかあの方と付き合っているの?」
「俺はあいつ殺す!千崎様は俺のだ」
「ぼくも千崎様、大好きだからコロス」
「千崎様ーーーー!!私の千崎がーーー!!」
このままではいつまで経っても治らない。こんなボッチな俺とつるんでいたら千崎の身も危ないかもしれない。今日は素直に帰った方が良さそうだ。幸運なことに今日は金曜日だし、月曜日には多少は治まっているだろう。俺は来た道を戻ろうとした時、凛とはっきりした声で千崎が声を上げた。
「えーと。みんなうざいから死んで??」
千崎という人間はこうも簡単に自分の意見を言えるのか。やはり凄いと思う。周りも突然のことで押し黙っている。
「千崎...。私も?」
「唯ちゃんは大好きだよ!!」
「良かった」
唯という少女は満面笑みを浮かべる。
「では先輩。私は教室へ行くので、明日また会いましょうね?」
「あぁ」
「あ、それと『もしかして先輩??私のこと好きになりましたか??』」
千崎は耳元で囁きかけてくる。
「千崎ー。もう少しで始まるから行くよー」
「えへへ。唯ちゃん。待ってー」
「だから、俺にだけあざとすぎるんだよ」
俺は顔を赤くしながら、ボソリと呟いたのだった。
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