10.68.悪戦苦闘
地を揺らす程の轟音が響き渡っていた。
地面が隆起し、溶岩が流れ、操られているであろう土が暴れまわっている。
ここでは溶岩も山もすべての大地が味方をするらしい。
笑うかのように自身に満ち溢れた土くれが動き、雪崩のように動いていく。
そこで一線の斬撃が山を切り崩す。
迫りくる土は切られることによって魔力を送れなくなり、ただの土くれに成り下がって地面へと落ちていく。
溶岩の中に落下しては周囲を燃やした。
「アレナ!!」
「『重加重』!!」
「チィ!!」
「零漸!!」
「合わせてくれっすよー!! 『爆拳』!!」
「『水龍』!!」
零漸がラックの背から飛び降り、俺の作り出した水龍に乗って接近。
地の声に向けて爆拳を繰り出した。
最大限の魔力を籠めての爆拳。
これは零漸が水龍の魔力を吸い取りながら放っているので、火力は以前の二倍はある。
轟音が響き渡って空気を振動させた。
腹の底に叩きつけられるような衝撃を感じる。
地の声は土を動かして防御しようとしたらしいのだが、アレナの重加重によって思うように動かせなかったらしい。
零漸の爆拳をもろに喰らって吹き飛んでいく。
だが空中で体勢を立て直し、再び地面に向けて手を伸ばす。
「『大地の主』」
ゴゴゴゴ、と地面を揺らしながら腕と土の金砕棒、八角の柱が八本出現した。
大きく腕を振るって俺たちを薙ぎ払おうとしてくるが、それは俺が許さない。
ラックの背中で立ち、アレナに靴を重加重で重くしてもらう。
ラックには申し訳ないがここは耐えて欲しい。
「三滝流!
ザンッ!!!!
大地の主の動きが止まった。
それは腕が両断され、土くれとなって地面に落下する。
浮遊していた八つの柱も同じように崩れ去った。
どうやら大地の主が発動していなければ維持することができないらしい。
もうあの攻撃を喰らうのは嫌なんでな!!
一撃で切り伏せさせてもらうぞ!!
ていうか日輪の三滝流すげぇ!!
めっちゃ切れ味が良くなるんだが!!
魔力として俺の中に入ってきた日輪は、三滝流のすべてを体に叩き込んだらしい。
刀の扱い方、体の使い方などが手に取るように分かる。
息をする様に使えているっていうのが少し違和感が残るけど……便利なことに変わりはない!
おっしゃこのままやったんぜ!!
「あーーにきぃいいい!! 追加して! 追加してくれっすー!!」
「あ、悪い!! 『水龍』!」
一気に二体作り出して、それを零漸の方に向かわせる。
乗り換えて魔力の供給源を確保した零漸は、再び握り拳を作って構えた。
「っしゃこれでいけるっすよー!」
「いけるー!! 応錬は地の声の技能を全部破壊して、零漸は攻撃だね!」
「その通り! でもアレナには攻撃の速度を遅くしてもらうぞ!」
「任せて!」
「よっしゃ任せた!!」
零漸は懐からティックから貰った手袋を装着した。
ぎゅうと力を入れると、先ほどよりも力が入る。
俺は今は白龍前で戦っている。
ラックの翼に当たらないようにしないといけないので、上に構え続けているけどね。
アレナは飛んでくる攻撃や、地の声の体を重くして機動力を下げてもらっている。
悪戦苦闘しているのは向こうのようで、すべての技能が崩されて焦っているらしい。
ついには自分で土の武器を作り、武装をし始めた。
「小癪な……!」
「てめぇーはタフなんすよ!! さっさと死ねっす!!」
「こらこら……口が悪いぞ零漸。こう言ってやった方がオブラートだ。くたばれ!!」
「変わんなくない!?」
『餌になれー!』
「いやそれはやばいぞラック!!」
うん、でも倒すことに変わりはないからね!
まぁ今優勢になって調子こいてたら痛い目に遭いそうなので、この辺で煽るのは止めておこう……。
「ていうか零漸、水龍にどうやって乗ってんの。それ水だぞ?」
「なんか乗れたっす」
「天才が使う言葉」
無意識に凄いことするからなこいつマジで。
まぁこの辺はあまり深く考えないようにしよう。
さぁてと、さっさとこいつ倒して天の声を引っ張り出したいところだな。
地の声は剣を土で作り出し、鋭利な刃物へと変えた。
そして零漸に突っ込んでくる。
「まずはお前だ」
「よっしゃ相手になるっすよっ!!」
水龍を突撃させる。
地の声はそれを回避し、零漸に直接攻撃を仕掛けにいった。
零漸もそれが分かっていた様で、拳を作って構える。
剣がこちらに飛んでくる。
それに合わせるようにして拳を突き出した。
ボギャッ!!
土の剣が根元から折れた。
そして拳が地の声の顔面に吸い込まれるようにして直撃する。
「な──ガッ!!?」
「クリティカルヒットっすね! 『爆拳』!!」
ボガアンッ!!
双方がそれなりの勢いで向かってきていたので、零漸の爆拳の勢いは数倍に膨れあがる。
まともに攻撃を喰らった地の声はそのまま山へと直撃した。
「『火龍』」
ぼうっと出現させた火龍を、地の声がぶつかった場所へと向かわせる。
炎が吹き上がって着弾したらしいが、煙で本当に当たったかどうかは分からない。
だがまぁ……あれくらいじゃ死なないだろ。
マジで生命力だけはゴキブリ並みにあるからな。
それ以上かもしれないけど。
「おらおら出てくるっすよー!!」
「……調子に乗りやがって……」
地の声が腕を上げた。
その瞬間、地面から鋭利な柱が出現してこちらに迫ってくる。
「効かねっす!! 『空圧結界・剛』!」
ゴガガガガッ!!
鋭利だった柱は結界に阻まれてボロボロになってしまった。
意外と細い柱だったので衝撃によって他の場所も折れたようだ。
ガラガラと音を立てて瓦解していく。
でもやっぱりまだそこにいたんだな。
んじゃ……溜め込んでいた空気圧縮をぶち込みます!!
煙に紛れて接近し、地の声の側にそっと置く。
「? ……ゲッ!!」
「はいっ!!」
パアァアンッ!!
乾いた音と同時に空気圧縮が破裂し、周囲の岩と一緒に地の声を吹き飛ばした。
山を転がり、岩を砕いて壁にぶつかってようやく勢いを止めた様だ。
ここに向かっている最中から溜めに溜めた空気圧縮だからな。
威力は高いはずだ。
案の定吹っ飛んでいったしな。
これもう何個か作っておけばよかったかも……。
危ないから一個にしたんだよな。
「ていうか俺たちが空中にいるのが強いんだよな多分。お手柄だぞ~ラック~」
『落ちないでね?』
「善処する……」
「天の声は何処にいるのかな」
「それなんだよなぁ。いや、探すか」
操り霞で探せば一発です。
目をつぶってシルエットを頭の中に送り込ませる。
地の声が天の声を守っていたのは知っているので、この辺の何処かにいるはずだ。
「……あらら、探す手間が省けたみたいだな」
目を開ける。
天の声が、ゆらりと出てきた。
あまり元気はなさそうだが、そんな事は知ったことじゃない。
俺は恨めし扇を取り出して、白龍前を仕舞った。
代わりに日輪前を取り出して帯刀する。
「んじゃ、希望通りに……しますかね」
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