第24章 暗闇の空間
限界回廊
クレーディアとロゼという人の、恐らく過去の映像を見た後……。
突如足元が消える感覚がいして、姫乃は数センチほど落下した。
いきなりの事に驚いて尻もちをつく。
「いたっ」
姫乃はどこかの暗闇に立っていた。
空気を感じる。
先ほどまでは映像を見せられていた感じだった。周囲の空気の匂いや肌にふれる感覚はなかったのだ。
だが、湿った空気が肌をなで、どこか古びた埃っぽい匂いが鼻を刺激している。
「ここは……?」
別の場所に移動したと考えて間違いなさそうだったが。
真っ暗で何も見えない。
「どこなんだろう。別の場所に来ちゃったのかな?」
じっとしてるわけにもいかず、手さぐりで辺りを探ってみる。ひんやりとした壁の感触をつたって恐る恐る進んでいく。
「何も、見えない」
どんなに目をこらしても、光を感じない。
目を開けているのに何も見えないなんてへんな感じだ。
自然と目が光を求め、光源となるものを探そうとする。ちょっと頭が痛くなった。
これは、目を閉じていた方がいいかもしれない。
開けているのに、開けていない、って感じてるみたいで嫌な感じにならない為に瞼を下ろして、他の感覚に集中する。
するとどこかで、水が一滴ずつ落ちる音がした。
規則正しく水音が響く中歩いていく。
どれくらい進んだんだろう。
自分がちゃんと移動しているのか確かめたくなる。
とにかく不安だった。
「誰か、いますか?」
まるで世界で一人きりにでもなってしまったような、そんな感じがして、姫乃は首を振った。
このまま考え事をしていたらどんどん悪い方にいってしまいそうだ。
「誰か……」
姫乃は、声を出しているかどうか分からない人へと語り開けてみる。
だが、返事はなかった。
自分は本当にちゃんとどこかにいるのだろうか。
現実の場所にいなくて、どこかおかしな所にいるのではないか。
心細さからそんなことを考えるようになった時だった。
足元から、カチカチと何かを打ち合わせる音がした。
「ひゃっ」
そしてカサカサと、何か軽い物が足の近くを這いまわる気配。
嫌な汗が背筋を伝う。
「む、虫とか……かな」
音は幸いにもだんだんと遠ざかっていく。
そうだ見えないって言うことは脅威があっても気づけないってことで。
急に落とし穴とかがあったり、危ない物とかが近くにあったりしない……よね?
見えない事への不安が一層募った。
「誰か……っ」
いないと分かっていても、そう叫ばずにはいられなかった。
どうしよう。
まさか暗闇の中にいることがこんなに怖い事だなんて、知らなかった。
姫乃は立ち止まって肌をさする、少し肌寒い気がする。
状況がいきなり変わって驚いてたから今まで気づかなかったけど。
それに、空気の中にわずかに土っぽい匂いが交ざっている。
ひょっとして、ここってどこかの地下……なのだろうか。
そういえばアテナが、限界回廊はどこか別の場所につながってて、そこへの移動手段として使ってると言っていたではないか。
姫乃は本来の用途どうりに限界回廊を使ったのかもしれない。
だが、それが分かったところで依然、暗闇に不便していることに変わりはない。
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