第3章 星詠の力を持つ少女
謁見の間へ通されて姫乃達を迎え入れたのはさっきの少女だった。
「遠路はるばるよくいらっしゃいましたね」
「……」
王座に座るのは、華やかなドレスで着飾って微笑む王女、コーヨデル・ミフィル・ザエル。
姫乃は困った様な視線をイフィールへ向けた。
イフィールは若干目をそらし気味になりながらも真面目に答えてくれる。
「姫様は部下の事を気にかけ、たまにああして様子を見に来て下さる素晴らしい方……なのだ」
言いきれないあたりが不安だったが、そういう事にしておいた。
「大体の事情はそこのイフィールから聞いていました。大変でしたね。セルスティー・ラナーについては行方を捜査中です。居場所が分かり次第連絡し、あなた達を送り届けさせてもらうのでご安心を」
「あ、ありがとうございます」
先ほどとは違い、どこからどうみても正真正銘のしっかりとした王女の顔で、姫乃達が気になっているだろう事を話すコヨミ。
落胆と不安を抱きつつも、姫乃はコヨミに感謝の礼を言う。
「彼女が行っている研究内容について興味があるのですが、やはり機密の関係で教えていただけないのでしょうね」
「それは……すみません、イフィールさんにも言いましたが、具体的な事は私達にも分からなくて」
「そうですか」
少しだけ寂しそうに表情を曇らせる。
こうして見ると本当にお姫様にしか見えない。
さっきのは偽物の人か何かじゃないだろうか、と思えてきた。
「私としても領民を守る義務があるので、この危機を乗り越えられる手段があるというのなら、協力したいと思うのです」
「……その、本当に」
「いいえ、すみません私としたことが、忘れてください。それで話は変わるのですが。あなた達が巻き込まれたという事件について詳しく話していただけませんか。場合によってはあなた達を故郷に帰す事にも繋がりますでしょうし、ご両親たちにも連絡がしたいでしょう」
「それは……」
ありがたい言葉だったが、それは無理だ。
姫乃は仲間達と顔を見合わせる。
「どうしよう」
「アタシは言わない方がいいと思うけど」
「僕はー、姫ちゃんに任せるよー」
「なあは、うんと……よく分からないけどコヨミちゃまは良い人だと思うの」
そんな感じで、小声でさらに二、三言やりとりした後、姫乃は改めて向き直った。
「あの、驚かないで聞いてほしいんですけど、実は……」
姫乃はその事件についての真相を話す事にした。
姫乃達がこことは違う異世界から来たこと、証拠になるかどうか分からないが、自分達の世界では魔法が使えない事や、科学技術が発展して魔法を使わずに空を飛べたり、離れた所にいる人と会話できる技術があることなどを話した。時には啓区の手作りロボットカメのうめ吉を見せたりもだ。
コヨミ姫は終始、真剣な表所でこれを聞いていた。
全てを聞き終えた後、コヨミ姫は王座を立って姫乃達の元へとやってくる。
そして深々と頭を下げた。
これには姫乃達はともかく、その場にいた他の兵士達も驚いた。
「試すようなマネをしてすみません。私には未来の出来事を知る事ができる、星詠の力があります。あなた方が嘘を言うようであれば、協力の是非を考えねばならないところでした」
未来の出来事を知る力……。
すごい。
一つの地方を治める人なんだから、そんなすごい力を持っているのが当たり前なのかな。
知らないだけで、エルケにいるコーティ―女王様も何かすごい力を持っているのだろうか。
事前にコヨミ姫の事はある程度イフィールさんから教えてもらったけど、この力については何も聞かされてなかった。
その事については仕方ないかなと思う。
少しだけ悲しいけど、しっかりした人だし。お城にいれる人達を無条件で信じるわけにもいかないだろうし。
「コーヨデル・ミフィル・ザエルの名に誓い、貴方達の話の信ぴょう性を保証します。調合士の捜索はもちろんの事、事件についての調査を行い、同じようにこの世界につれてこられてた者達のことを全力で捜索し保護する事を約束しましょう」
「ありがとうございます!」
姫乃はコヨミ姫に向かって大きく頭を下げた。横で皆が同じようにするのが分かる。
始めは不安だったけど、イフィールさんが仕えている人だけあって、やっぱり凄い人だ。
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