終章 不穏の影
エルケ西部 火山上空 『+++』
町の西側、岩砂漠を超えたその先には、熱く燃えたぎる灼熱のマグマを吹き出す火山群が存在する。
その中の一つ、ひときわ大きい火山の火口付近に、大きな影がさした。動く者のいないはずのその場所で、唯一影だけは風に流れて西から東へと流れていく。
もしそこに人がいたなら空を見上げ、そこに浮かぶ影を作り出した物体に気がつけば腰を向かしていただろう。動物ですらその眼を疑ってしばし動きを止めたかもしれない。
それほど影の主は異様な物だった。
空の雲と共にゆっくりゆっくりとたゆたうそれは、大地そのものだ。
目を疑うような光景だがしっかりと存在している。
誰がどうやって、地面を抉り取り崩れ去らせることなく空へ押し上げたのだろうか……。小さな町ひとつぐらいにもなる面積の大地を。
だが空から俯瞰するように眺めてみれば、この世界にはあるはずのない建物が大地の上に乗っている事に気づけただろう。
その建物の玄関にはこう書かれた石材があった。
「妙なものを持ち込んだな」
一つの声が誰もいないはずのその浮かんだ大地の上で響いた。
瞬間、フードを被った女性が現れる。
だがその体は、ところどころが透明になっていて向こう側が透けていた。その不安定な部分が、吹いている風とは関係なく今にも消えそうに揺らいでいる。
……あまり本体から離れられないようだな。
女性はさっそく用を手短にすませることにした。
羽織っているローブのから、布の袋を取り出して、入っていた中身を宙にばらまく。
「せいぜい利用させてもらうさ……、この世界を壊す為に」
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます