拝啓、祖国が滅ぼされたのであなたの国を滅ぼし返しに参ります。
グッドバイ左衛門
第1話 惨劇の中で
泣き叫ぶ声を聞いた。
助けを求める声を聞いた。
それが叶わず、断末魔に変わったのを聞いた。
真夜中だというのに、窓の外は赤く揺らめく光に照らされ、不自然に明るい。兄が憔悴しきった表情で部屋に飛び込んできて、僕の腕を掴んでから駆け出した。家の裏に回り、庭に掘った小さな穴に僕を押し込み、上から蓋をした。
夜が明けるまで絶対に出てくるなよ、と兄は言った。
真っ暗で何も見えなくなったが、遠くの断末魔に交じってざざっざざっという音がする。あとから分かったが、兄が蓋を土で覆い隠そうとしていたのだ。その音が急に止み、誰かが勢いよく走り去り、その足音に続くように、いくつもの足音が僕の鼓膜に響いた。それからやがて、叫び声は聞こえなくなり、ただ何かが崩れ落ちる音ばかりが小さく聞こえた。事態が何も分からない僕は、その単調な音と、自分の呼吸の音だけを耳に残しながら、糸が切れたように眠ってしまった。
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