第100話 日曜日。雪が来る日の朝 (ホロ視点)
今日も夢は見なかったな......。
やはり側にプディがいないとそんなに力が発揮されないのだろうか?
だけどここ数日、ゆっくり眠れているからか身体の疲れは取れている気がしていた。
俺はケージの中で身体を伸ばした後、欠伸をしながら薄目を開け、カーテンから漏れる朝の光にまた眠気を誘われそうになっていた。
もうちょっとのんびりしたい所だが、今日は朝早くから幸太郎がバタバタと掃除をしている。
と言っても一人暮らしの男性の部屋のわりに幸太郎の部屋はとても綺麗だ。
俺やデンのせいで、毛はかなりの量が落ちている筈だし、匂いも凄いはずだ。
だけど幸太郎は基本的に綺麗好きなのか、まめに掃除をしているのを目にした。
デンからいつもその後ろを追っかけまわされ邪魔されているが......それにもめげずに幸太郎は掃除をし、部屋を綺麗に保っていた。
だから、こんな風に慌てて掃除しなくても幸太郎の家の中は結構綺麗だった。
俺は嗅覚が強いから人工的な芳香剤の匂いは苦手だ。
それを分かってくれているのか知らないが幸太郎の部屋には芳香剤は置かれていない。
だけど、この部屋の香りは清潔感に包まれている様な爽やかな感じがしていた。
まあ猫である俺が言っていても説得力がないだろうが。
何が言いたいかと言うと、今日は雪が来る予定の日曜日だ。
なので幸太郎は朝早くからバタバタと掃除をしているのだと思う。
幸太郎が掃除道具を片付けた後、俺のゲージに近づいてきた。
「ホロちゃん? 起こしちゃったかな? ゴメンな? ご飯、食べるよな?」
そう、幸太郎は俺に優しく声をかけてケージを開けてくれた。
俺はケージから外に出て幸太郎に近づき、幸太郎のちょっと硬い太ももを右の前足で押した。
「にゃーおぉ(ご飯くれ〜、美味しいのを頼むよ)」
言っている内容はあれだが、俺はなるべく高めの思わず甘やかしたくなる様な甘い鳴き声でご飯の催促をした。
ちょっとだけ甘えたフリをして美味しいご飯を奮発してもらおう作戦だ。
は! も、もしかして俺のお腹が少しだけぽっこりしてきているのは俺の自業自得なのか?
そんな風に思いながら幸太郎の太ももをフニフニと押す。
相変わらず幸太郎の太ももはちょっと硬い。
いつも思うんだが、こいつ結構、いい筋肉ついているんだよな。
全然、運動出来ないもやしっ子にパッと見、見えるんだが......。
俺を優しい手つきで膝から下ろした後「ちょっと待っててね」と言いながら、幸太郎がご飯(キャットフード)を用意してくれた。
俺が食べ始めたのを見ながら幸太郎は小さく息をついた。
幸太郎、本当に俺に対して過保護だよな。
優しく見つめてくる幸太郎に一瞬食べるのが止まった俺だが、ハア、ハアッとデンの息づかいが近づくのを感じ、危機感を覚え、慌てて食べるのを再開した。
デンは俺のご飯を食べたりしない。
だけど、間近でジロジロ見つめられ、たまにヨダレも落とされる。
全力でデンが我慢しているのが分かり複雑な心境になる俺だ。
とそんな事に必死になっていた俺だがその時だった。
ピン、ポーン。
控えめにインターホンが鳴った。
ゆ、雪が来た。
俺の心臓がドクッドクッと音を立て始めた。
デンのヨダレが入りそうで鳴っている訳ではない(ちょっとそれもあるが......)
雪に昨日の事を聞けるだろうか?
やはり、俺の声は届かないのだろうか?
ドキドキ、ドキドキ。
幸太郎が立ち上がるのを見ながら、俺は皿を舐め、高鳴る心臓を落ち着かせ様としていた。
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