第76話 秘密の部屋 繋がれた あの子(プディ視点)
私は目の前の不気味に見える階段を見上げた。
私の身体は小さい。
そもそも、私達の星の種族は地球でいう猫と言う動物に似通っている。
違いと言えば前足の指が1本づつ多い事と、地球人にはない、超能力の様なパワーが私達にはある事。
そのパワーは皆、生まれた時から備わっているが、その力自体はそれぞれで、皆が同じぐらいという訳ではなかった。
私は子供だった。
見た目も地球でいう子猫と同じサイズ。
この星の生活用品は全て、私達の背の高さに合わせて作ってあった。
それはそうだろう。
私達の星には植物に近しいものは存在していたが、動物、生き物に近しいものは、他の種族は存在していなかった。
食べ物も肉などはない。
それに近しいものを作り出してはいたが。
私達は超能力というものはあったが、そんなすごいモノでもなく、王が絶対。
と言う事以外は平和な星だった。
感情が少ない分、怒ったりもない。
だから平和なのだ。
そう思っていた。
実際は皆、自分が貧しい立場であっても、楽しい事がなくても態度に出さない。出せない。
皆、人形の様だったのだと今では思う。
地球での猫の特徴と私達の種族は習性までもが似通っていて、高い場所を好んだ。
よって、扉、家具などは小さめだが、天井などは高めであった。
その古い階段は、地球には無い素材。だけど、地球でいうと木材に近い素材だったのだと思う。
この素材も地球でいう所の木や植物的な物から生み出した素材だから。
と言っても、地球と私が生まれ育った星は気が遠くなるほどの距離があり、そこで生まれ育った生物が、違って当たり前だった。
私が階段を一歩登ると、奇妙な音が鳴り響く。
今日の様に皆が出払ってなければ、きっとすぐに大人達に気づかれて私は自分の部屋に逆戻りする事になっただろう。
だけど、今日は運が良いのか悪いのか、周りには他のモノはいなかった。
この階段。
こんなに古いのに、壊れてしまう、なんて事はなかったのだろうか?
作りも雑に見える。
何年も誰も登っていなかったかのよう。
何か化け物がいる。
確かに、そんな噂を信じてしまいそうな程その階段は不気味だった。
階段を登っていくにしたがって、上の部屋の様子も少しだが見えてくる。
壁の色は黒く、なんだかこんな所に居ると正常な方でもおかしくなってしまいそうな、そんな天井や壁の色だった。
怖い。
感情を表に出してはいけないのに、怖くて震えが止まらない。
戻れば良い。
戻って、いつも通り、私の生活する為に心地良い空間が整えられた、私の部屋で、ゆっくりと、私の世話をして下さる方を待てば良い。
そうすれば良いんだ。
そう分かっているのに。
どうしてだろう。
私の前足は階段を登る。
奇妙な音を立てながらも、上に、上にと......。
そして、登った先には扉があった。
鉄格子ではない。
もし、化け物が本当にいるのなら、こんななんの変哲もない扉、簡単に壊してしまうのではないだろうか?
扉にはやはり、鍵がかかっていた。
声はこの部屋の中から聞こえる。
悲鳴の様にも聞こえるのに、何処か温かく優しい声。
会ったことがない、だけど母親の声の様な錯覚を思わせる程の優しい声。
私はまた向こうに行きたい。
この部屋の鍵を開けたい。
そう、願った。
『誰かいるのかい?』
扉の鍵は開かなかったけど、高めの男の子の声が扉の向こうから聞こえた。
『アナタは何をしているの? ココで何をしているの? ココは化け物が居るんでしょ? 大丈夫なの?』
私は警戒しながら、そう、問いかけた。
少しして、
カチャリ
そう音がなり、鍵が開いた事が分かった。
私じゃない。
中にいる男の子が開けてくれたんだ。
私はゆっくりと扉を開き、その開いた扉の隙間から部屋の中を覗いた。
部屋の中には、椅子に腰かけた見た目でいうと、長毛の黒い子猫。
もちろん猫ではなく、私と同じ種族。
その子は身体に色々な管を繋がれていて、そのこの目の前には大きなモニターがあった。
目をつぶっている様だったが、ゆっくりと目を開きこちらを見た。
その子と恋に落ち、その子の為に自分の星を離れるなんて、その時の私は夢にも思ってなかった。
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