短編集
硬あげミスラ
夢見る少女は何を視る
昔々あるところに
おじいさんとおばあさんがいました
おじいさんとおばあさんには一人の娘がいました
娘は身体が弱く、あまり外に出ることができませんでした
そんな娘のことを気にした一人の少女が、窓越しに話しかけてきました
「ねえねえ、君、名前は?」
「私はみお、あなたは?」
「さちって言うの!よかったら一緒にお出かけしない?」
「私、身体が弱くてあまりお外に行けないの。ごめんなさい」
「そっか…、じゃあ私がお外のお話をしてあげる!」
少女は、外に出られない娘のため、外にある色々なお話を聞かせてあげました
外の世界を知らない娘にとってそれは、夢のように素敵な時間でした
おじいさんとおばあさんは、娘が日に日に笑顔になっていくのをとてもうれしく思いました
ある日のこと…
「…でね、東の方にはおっきな海があるの!その海にはね、
なんでも願いを叶えてくれるって言い伝えがあるの!」
「わぁすごい!…私の身体も、その海に願ったらよくなるかなぁ…?」
「きっとなるよ!…そうだ、私がお願いしに行ってくる!
みおちゃんが元気になりますように、一緒にお外で遊べますようにって!」
少女は、そう言って走って行ってしまいました
…少女はそれから帰っては来ませんでした
来る日も来る日も少女を待ち続け、ひと月が過ぎました
「おじいさん、おばあさん、私…さちちゃんを探しに行きたい!」
「大丈夫だよ、さちちゃんはもうすぐ帰ってくるからね?」
「でも、もうずっと帰ってこないの!私のせいでさちちゃんが…」
おじいさんとおばあさんは気が気じゃありませんでした
実はさちちゃんはもう、帰ってこないことを知っていました
海に向かう途中、足を滑らせ、崖から落ちてしまったのです
おじいさんとおばあさんは、みおちゃんを悲しませないよう、嘘をついていました
ある日、おじいさんはいつものようにみおちゃんの部屋に行きました
「みお、身体の様子はどうだい?今日は天気もいいから少しお散歩しないかい?」
ですが、おじいさんが部屋を開けると、みおちゃんは部屋にいませんでした
手紙を一つ残して…
「おじいさん、おばあさん、ごめんなさい
私やっぱりさちちゃんを探しに行きます
私の大切なお友達なの」
みおちゃんは、さちちゃんを探すために一人で東の海へ歩いて行きました
その身体はボロボロで、足は擦り剥き、服は破れ、咳の度に血を吐き、それでも彼女は進んで行きました
そして、とうとう広大な海にたどり着きました
「ここが、海…さちちゃん!どこにいるの!?」
みおちゃんは霞む目を凝らし必死に探しました
そしてとうとう、砂浜に倒れてしまいました
「さちちゃん…さちちゃん…
お願い、さちちゃん…もう一度だけ…会いたいよ…」
すると、声が聞こえてきました
「みおちゃん…みおちゃん…!」
「さちちゃん…」
「ごめんねみおちゃん…遅くなっちゃった」
「もう、心配したんだよ?ずっと帰ってきてくれないから、私…」
「うん、ありがとう、これからはずっと一緒だよ」
「よかった…、でも、少しだけ休んでいい…?ちょっと、疲れちゃった…」
「いいよ、一緒に休も?」
おじいさんとおばあさんが海へ駆けつけたとき
みおちゃんは砂浜に座っていました
「あぁよかった!心配したんだよ?…みお?」
みおちゃんは…幸せそうに笑っていました…
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