第6話 よかった探し
『少女パレアナ』に影響を受け、よかったことを探すようにしていた頃がある。
ある時、ふと思った。
よかったをわざわざ探すって、
探さなければそれが手に入らないからではないか……
だったら……と、
だから毎日、思ったんだ。
今日も目覚めてよかった。
今日もご飯が食べられてよかった。
今日も洗濯された洋服が着られてよかった。
今日も遅刻しないで行けてよかった。
今日も何事もなく過ぎて帰宅できてよかった。
今日もチョコを食べられてよかった。
今日もお風呂があったかくてよかった。
今日もふかふかベットで眠れてよかった。
私が見つけるようになったよかったは、ありきたりの毎日の中で変化もなく、ただ過ぎ去る時間の中で、大きく変化のないことを安堵する『よかった』だった。
そんなふうに私は、いつの間にか探さなければ手に入らない何かではなく、普通のことを『よかった』と、安堵するようになっていった。
ある時、当たり前のことが当たり前にあることって、よかったことじゃなく普通のことなんだと、だからそれをよかったと思うなんて、逆に悲しいように思えた……
そんなことくらいしか自分にはよかったがないのか……
けれど、そう考える期間がある程度の時間あった私は、そのまま「普通」であること、「平凡」であることにこそ価値があり、それでいいじゃないかと自分に言い聞かせ、心の中で泣き叫びながら、「よかった」って言った。
今、口癖のように「よかったね」「よかったじゃん」「よかったよかった」と、よかった探しのままある程度ポジティブに物事を捉えることができるようになっていると思う。
それはそれで、結局よかったんじゃないかと思う。
今、大きなうねりの中で、当たり前が当たり前じゃなかったことに気付かされ、当たり前をよかったと思えていた自分の気持ちにこそ価値があったと気付かされた。
神様
当たり前をよかったと思えるように、当たり前をください。
そう、願う。
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