第弐拾肆話―アランの過去―

時をさかのぼる。

黒人の少年アラン・アルバートはキューバ生まれ。

彼の人柄を説明するなら質実剛健な性格だろう。努力と友情を大事にしていた。


「やったなアラン!」


「やっぱりおまえは最高だぜ!」


仲間、選手から歓迎されるアラン。

相手のゴールラインを超えてボールを地面につける。ダイブのようはジャンプして地面に激しく落ちるあれがグラウンディングと言う。獲得点数が多く、トライと呼ばれる。そのグラウンディングでトライを決めたアランは歓喜の叫びを上げた。


「うおぉぉぉぉ!!やったぞ」


「「うおぉぉぉーー!」」


将来はラクビーのプロ選手は間違いないと思われていたが、その道は永遠に閉ざすことになる。


「それは、何の冗談だよ?」


試合中に激しい怪我をした彼は病院で手術を受けた。激しい痛みだったが、ラクビーの怪我と思えば勲章ものと考えるほどラクビーバカであった。そんな彼は手術後に治したら、早くしたいなぁと待ち遠しくラクビーの雑誌を読んでいた時、病室に入ってきた父親に

2度と足が動けないと告げられた。


「・・・・・」


「なぁ、父さん。これは冗談だろ。相変わらずつまらない冗談を言うから困るぜ。ハハ」


「事実だアラン。今の医術では施しようがない。ラクビーは・・・」


「はぁ!う、ウソだろ。う、うわあぁぁぁぁーー!!」


悲しさと怒りをない混ぜった叫びは誰も彼を望んだ答えはしない。

父親は、涙を堪えていたのをアランは分かっていながらも、八つ当たりをした。


「どうしてオレだけが、こんな目に合わないといけないんだ。

これから、何をすればいいんだよ」


「落ち着けアラン」


「うるさい!なんだってこんなことになるんだ」


声を荒らげるアラン。見舞いに訪れた仲間や友達にもぶつけようがない怒りと悲しみをぶつける。

怒った仲間、悲しんでしばらくは会わないよと気を使う者もいれば

チームの事を考えるばかりの人もいてアランの身体を心配しない輩もいた。アランはそのすべて憤激した。


そんな態度を繰り返している内に家族以外の見舞いはいなくなった。自暴自棄となった彼は自殺するしかないのかと考えたが勇気がなく実行しなかった。


「・・・・・どうしたらいいんだよ」


その呟きには答えはない。外は快晴で気持ちはふちの中で彷徨っている。アラン・アルバートはもう生きるしかばねのようになっていた。そんな彼が立ち直ったのは持ち前の明かさと前向きな所だった。


「ラクビー関連の仕事につければいいじゃないか・・・・・オレ?」


消灯時間となった病室になかなか眠れずにいたアランは、咄嗟にそうひらめいた。


(もう、あこフィールドに立つことは出来ない。だが、熱意は残っている。この熱さがあればオレはまだ終わっていない!)


アランはひまを持て余した時間を自問自答や考え事をしていた。そんないつもの時に神託を下したような考えに至り衝撃を受ける。それからは、仲間や後輩の指導をするようになった。


「ラクビーは瞬時の判断能力が必要不可欠なんだ。だから迷いは大きな時間になり隙がある」


アドバイスをしたり、試合で負けた選手を激励をした。アランは指導する楽しさや責任の重たさを実感して将来は選手を育てるのも悪くないと考え始める。彼は夕食となると母や父にラクビーの試合で盛り上がる。


「アラン熱すぎるのもいいが、食べ物を熱いうちに食べないと熱くならないぞ」


「そうだな。よし、母さんが作った料理だ、美味しいうちに食べないと」


「そんなに慌てなくてもいいよ」


家族に八つ当たりもなくなり、毎日が楽しく新しい夢を見つけたアランは嘘偽りなく充実していた。

しかし、その日常は突然に終わりが迎えた。居眠り運転の車に彼は道路を渡ろうとして衝突した。


「うぅ、いてぇ。いてぇぇーよ!誰か助けてくれ」


車椅子から身体の感覚が無くアランは、重たくなったまぶたをゆっくり閉じて亡くなった。


「はっ!な、なんだここは?」


アランは目覚めた。そこには光の世界と形容するしかない。神々しく地面も空もない不思議な空間。

そこに立つのは、北欧ほくおう神話のトール。


「あんたは誰だ?」


「――――」


アランの記憶にはどんな言葉を交えたか覚えていない。

もしかすると記憶を一部、変えたのかもしれないと考えていた。

アランが次に目覚めると異世界アークブルー。


「どこなんだ。ここは?

まるでゲームの世界じゃねえか。

誰か教えてくれよ」


問いの返事は帰ってこない。自然は美味しく建物がそんなに高くもないはずだが人が無性に多い。


これは、きっと夢だ。そのうち覚めるのだろうから、思う存分に遊んでやると楽観的に考えた。


「おぉー、召喚は成功したようだ」


「これが、世界を救う一人・・・」


「・・・・・しかしこの容姿を見るだけで気分を害する」


周囲のおっさん達の、好意的な眼差しから訝しむ視線に変わる。

黒人を蔑視するその態度にアランは苛立ったが、よくそんな扱いや眼差しに慣れてわざわざ怒るのも辟易していた。

そして今いるのは城壁の上であることと、その下に魔法陣がある。


「さっそく王様に報告だ!」


「はっ!」


アランは急に召喚されてしまい右も左も分からない状況だった。


「転生者よ。ついて参れ」


「あ、ああ」


恰幅かっぷくのいい中世ヨーロッパ衣装した男性貴族についていき案内されたのは厳かなドアであった。


貴族の男性がドアを開くとファンタジーな光景だった。

左右に精錬と一列に並ぶ騎士。そして奥には玉座かある。そこに座るのはアイボルグ家の当主

であり国の最高権力者。


「あれが、王様なのか?」


「なっ!?貴様、失礼ではないか!言葉は気をつけろ」


アランは貴族の男性について歩き王様に近づくと深々と腰を落とし頭を下げる貴族に見様見真似で頭を下げて礼儀をとる。


は第65代国王の

エイリーク・アイボルグである。顔を上げよ転生者。貴殿の名は?」


顔を上げるアランは笑顔で言う。


「オレはアラン・アイボーグ。

それで、国王だけ?どうしてオレを?」


「や、やめろ無礼であるぞ」


「構わぬ。続けよ」


「コホン。どうしてオレを呼ぶんだ。それぐらいは説明がいるだろ?」


「よかろう。まずは召喚したのは召喚の儀と呼ばれるものじゃ。

そして、アランよ。神に選ばれし世界を変える力を持つのだ!」


アランは国王エイリークの話を耳を傾け聞いていた。そして失笑しそうになる。もしかするとファンタジーな世界だと騙そうとしているのではと最初は考えていたが、

話をするたびに様々な表情を見て事実なんだと思った。


「そなたにはジョブがあり、ステータス上がある。ジョブは神殿に行けば可能なジョブに帰れることができる」


「なるほど、よく分かりましたよ」


明るく答えると周囲から無礼だぞ怒られたが国王かよい!と一声で止めさせた。そして気になったのが国王から出たアンノーンオーブという言葉。


「アンノーンオーブと神に選ばれし者に与えられる森羅万象しんらばんしょうの力である」


「はあぁ・・・なるほど?」


しかし転生されたばかりのアランはアンノーンオーブを聞いてもピンとこなかった。嘆息した国王は別の言い方をする。


「つまりチート能力である」


「うおぉー!!スゲえぇーあのチート能力が、アンノーンオーブだったのか!?」


驚愕するアラン。それからはアランが既知と未知の情報を聞かされ長い説明が終えると国王は言った。


「英雄よ。そなたのパーティに我が国で名をとどろかす実力者達を集めておいた。誰か呼びに参れ」


「ハッ!ただちに」


左右一列に並ぶ騎士の一人が、敬礼して呼びに行った。その間、アランは種族やパーティの編成などを聞くことになった。やがて、国家が集めた実力者らを謁見の間に入り玉座に続く階段の前で膝を曲げて皆がうやうやしく礼をする。


「では、アラン・アルバートよ。

そなたに相応しいと思った人物を選ぶがよい。時間はいくらでもある。ゆっくりと考えるといい」


「王様、オレ決めたしたよ」


「ほぉー、聞かせよ」


「仲間はオレが選ぶ。これが答えだ!」


案の定、玉座の間はアランを糾弾の怒号へとなった。国王はその騒ぎを手を上げて止めさせる。

もし見つからければ、いつでも余を頼るがよい。と言葉をされアレンは城下町を一人、歩いていた。


「混乱していたが、オレの足が自由に動けるようになっているじゃないか!」


アレンは、とりあえずギルドに向かうことにした。ここなら、クエストや仲間を集めることも出来る事を国王からの言葉で知った。

いざ、入ってみると言葉を失った。受付、掲示板、席、鎧や剣を装備していた事にアレンは驚いた。


「よし、まずは仲間からだな」


しかし、レベルが1なので相手にされず翌日にまた行くことにした。


「そこの可愛いクールな女性、よろしければオレとパーティを組んでくれないか?」


「あら、あなたは?」


「オレの名はアラン・アルバート。君は?」


「私はサラシャよ」


それがアランとサラシャの最初の出会いであった。サラシャは、ナンパだと思いてきとうにあしらうつもりでいた。


「申し訳ないけど私は誰も組まないから」


「そこをなんとか」


「無理よ」


一蹴された。アランは仕方なく別の人を声を掛けるが断われる。

やけくそになったアランは手当たり次第に声をかけた。そして数えるのが忘れるほどの人数に達すると。


「ああ、いいぜ」


承諾したのは、赤い髪と目を持つ

バサラだ。


「マジか。助かる。えーと?」


「俺はバサラだ」


「オレ、アラン・アルバート」


握手を交じる。今日は二人だけで魔物を戦いや教えもしていた。

それから、アランは一週間も過ぎてもサラシャを声をかけ続けた。

茶髪のボブヘアーに軽装タイプの青い鎧を着込んだ騎士を熱心に声をかけ続けた。


「今度こそ、仲間になってくれないか?」


「ハァー、仕方ないわね。

アランの仲間になってあげるわ」


「俺は、新しく仲間になった

バサラだ。よろしく頼むぜ」


「私はサラシャよ。よろしく」


新しく仲間になった二人は握手をする。こうして、アランとサラシャとバサラの出会いはこうして知り合ったのだ。

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