第248話 カクさん

助かった・・・・・いや、まだだ!まだだ!!デブとガリとじじーが来る可能性がある。

いや、可能性ではなく絶対に追ってくるだろう。

デカ乳女にも恐怖は感じるが、ジルドほどのプレッシャーは感じる事は無かった。

多分、デカ乳女も『魔王』なのだろうがジルドが発した恐怖には到底及ぶことは無い。

それより、デブとガリとじじー!

この3人はジルドと同レベル。いや、それ以上に強いのかもしれない。

3人も集まれば確実にジルド以上の強さである事は間違いない。

サキュバスの女王・ミリア、ハルフェルナ最強種族の龍である龍之介がいても倒すことは不可能だろう。

いや、逆に殺される未来しか見えない。


なぜ、俺たちじゃなくズガーンダムとかワレトラマンを標的にしてくれなかったんだよ!

あいつらのほうがハルフェルナにとって脅威だろ!!

俺なんかじゃなくてフェルナンドの寝首を掻いてくれよ!

あいつは世界征服を目論んでいるんだぞ!

俺なんか自分の世界に帰りたいだけなんだぞ!


と愚痴りながら装甲車から降りて木に背もたれさせた二人に声を掛ける。


「智弘、将太! 具合はどうだ?」


「俺はもう大丈夫だ!」


ゆっくり智弘が立ち上がる。

将太はまだ少し頭を振っている。


「無理するな! 将太!」


新しい装甲車をマジックランドセルから出し、動かなくなった装甲車をランドセルに入れたとき龍之介が声を上げた。


「なんか来る! 凄く強いヤツが来るよ!!」


龍之介が声を上げたときには目の前に太った悪魔が立っていた。


「クハーーー!!」


太った悪魔は胸を張り体を反らし雄たけびを上げた。


「ハーレム小僧! ソアラちゃんはどうした?」


太った悪魔は俺を睨みながら声を上げる。

その瞳は赤く染まり怒りを発散させていた。


「あの小娘のことか? あの小娘なら回復魔法を掛けて逃がしたぞ!

 感謝される事はあっても憎まれることは無いはずだ!!」


精一杯の虚勢を張り答える・・・・が、小便をちびりそうなくらい内心ではビビッている。


「そうか、が! お前の命を貰い受ける!!」


太った悪魔が巨大な手で俺を指す。


「数百年前、お前と同じような能力を持ったヤツがいてな、俺たちでは討伐できなかったのでお譲が代わりに始末してくれたんだよ。

 優しいお譲の手を煩わせたことが屈辱でな!

 2度も手を煩わせる事になったら『悪魔公爵』としては偉そうな顔が出来なくなるのでな!

 お前には悪いが俺たちの名誉のために死んでもらう!!」


「ふ、ふ、ふざけんな! 俺の能力ってなんだよ! 若干の耐性しか持ってないぞ!

 女神さまがくれた能力だぞ」


「女神だと! アリーナか!! 許さんぞ!!」


と太った悪魔の犬のように長い口が言うと黒い体はより黒く、目はより赤く輝いたとき、両手を巨大化させ襲い掛かってきた。


「小僧! 死ねーーー!!」


ガキン!


悪魔と会話しながらいつでも出せる用意をしておいたタナニウムの焼肉プレートを取り出し太った悪魔の一撃を受ける。


「お主!! サンダーブレード!!」


ミリアが咄嗟に雷撃の魔法を繰り出す。


チュドーン!


ものの見事に命中した! が、太った悪魔は何事も無かったように立っていた。


「フッ! そんなもの俺に効くかよ! スパイク・クロー!!」


悪魔の右人差し指の巨大な爪がミリアに向けて放たれた!。


「うきゃーー!」

間一髪、尻餅をつきながら巨大な爪から逃れた。


「お兄ちゃん、大丈夫!!」


龍之介が龍の姿で近づきで悪魔を踏みつけた。


ドダーーーン!


が、悪魔は龍之介の足を掴んだ瞬間、反対の地面に叩きつけた。

辺りに土煙が上がる。


「龍之介!! 大丈夫か!! この野郎!!」


「龍之介? まさかとは思っていたが、こいつ、龍王のところのバカ息子か! でかくなったモノだな!」


「お前、龍之介を知っているのか!」


「そりゃ知ってるさ! こいつの親父は俺たちの関係者だからな!」


「やはりクリムゾンの者か!」


智弘が俺の隣に来て叫んだ!


「俺ほど強い悪魔がクリムゾン魔国以外のどこにいると思ってるんだよ!

 少し考えれば分かるだろうが!」


怒気を発しながら悪魔がしゃべる。


「この馬鹿がお譲に歯向かったから、こいつの親父が罰したんだよ!

 まぁ、こいつを殺すとお譲に大目玉を食うから、どこかへ行ってろ!!」


太った悪魔は龍之介の片足を掴みながら片手で輪投げをするように頭上でブンブンと振り回し投げ飛ばした。

木々を越え龍之介は遙か彼方に投げ飛ばされた。


「龍之介!!」


ヤバイ! 子供とはいえハルフェルナ最強種族の龍を物ともしないなんて・・・・

こいつにはマシンガンは無力だろう。

サックブラッドナイフを取り出し投げつける。


グサ!


見事に命中した。


「ぐお!」


と言うと悪魔はすぐに引き抜いた。


「このナイフ、ヤベーな! 血をごっそり抜かれたぞ!

 お前、このナイフを使って血を集めていたのか! 許せん!!」


サックブラッドナイフを手元に呼び再度投げつけるが、当たる直前に綺麗にかわす。


ちっ、ただのデブじゃねーな!

太った悪魔は巨大な右手で突き刺すように突進してきた。

背中に背負っているマジックランドセルからまぐろ君を取り出し、再度、焼肉プレートを構えた。


ドッゴン!


焼肉プレートに巨大な手の一撃を喰らう。

まぐろ君でデブ悪魔の左脇腹を突く。


ガシ!


デブ悪魔はまぐろ君を掴む。

俺は技量や技術はないが力だけは無駄にある。

四つに組合、お互いが押すことも引くことも出来きず、こう着状態に陥った。

俺の目の前には犬のように長い口を鈍く光る赤い目が俺を見据える。



シュッ!


「うぐっ!」


デブ悪魔が体を一瞬反らした瞬間、口から鋭く尖った舌が飛び出し右肩を突き刺し貫通した。

思わず声が出た。


「ハハハハ、ハーレム小僧! これでお前も終わりだ!! 俺の舌はグリフォンも一撃で即死する猛毒だぜ! お前もここで死ね!!」


「ぐお!」

痛みが体に走り刺されたところから血が流れる。


「アンチポイズン! ヒール!!」


すっかり回復した将太が魔法を掛けてくれたおかげで出血は止まり、刺された痛みもひいた。。


「女~! アンチポイズン程度では俺の猛毒は消せないぜ!! はははは、勝負あったな!!」


と高笑いするデブ悪魔に智弘が


「ファイヤーボール!!」


と叫びながらマジカルなんちゃらを振る。

マジカルなんちゃらのさきから火の玉がデブ悪魔目掛け飛んでいく。


「ファイヤーボルなんざ俺に効くわけねーだろ! ガキ!!」


デブ悪魔は避けもしないでファイヤーボールが命中し体が燃え上がった瞬間!


ズガン!!


鈍い音が響き渡った。

マジカルなんちゃらが20mほど伸びて突き飛ばす!

デブ悪魔は突き飛ばされ地面を転がる。


「ガキ! 舐めた事をしやがって」


顔を真っ赤にさせ飛びかかってくる。


「サンダーブレード!」


ミリアの魔法が顔面に炸裂した。


「効かねーよ!」


とデブ悪魔は叫ぶが一瞬視界を遮った。


チャンス!!


まぐろ君でデブ悪魔を斬りつけた。

視界が遮られたことで回避が遅れた。


シュパッ!!


ドデ!という音を立てながらデブ悪魔の巨大な右腕を肩から切断した。

紫の血を吹き上げながら切断された箇所を押さえる。


「グワーーー! 小僧!許さん!!」


怒声を上げながら切断した右腕を拾うと、徐に切断された箇所にくっつける。


!!!!


何事も無かったようにデブ悪魔は切断された右肩を回す。

なんという再生能力!! なんててヤツだ!!


「ホーリー!!」


将太が浄化の魔法を唱えた。


「ハハハハハ、お譲ちゃん! 俺に浄化の魔法なんて効かないぜ! 

 こう見えても善行を沢山積んでいるんだぜ!!

 お譲に出会ってからと言うもの清い悪魔生活を営んでいるんだぜ!!」


「お前! 何、言っているんだ! 悪魔が善行とかふざけているのか!」


「悪さをするとなお譲や宰相閣下に大目玉を食うんでな!

 お譲の悲願の為にハルフェルナに害を為すお前のような悪人を始末しているんだよ!


 ????


 お前! 俺の猛毒はどうした!! なぜ死なない!!」


と将太から俺に視線を移しながら言った。


「あっ!俺、毒耐性を持っているから」


「ふざけるな! グリフォンやドラゴンでさえのた打ち回るんだぞ!

 お前人間じゃないな! 魔族だろ! どこから・・・・」


ドドン!


と言い終わらないうちに智弘が再度マジカルなんちゃら振りながら伸ばしデブ悪魔の頭を直撃する。


「かーーーいてーな!! ガキ! お前を先に片付けた方が良さそうだな!」


デブ悪魔が標的を変えると智弘は一瞬怯んだ。

速い!標的を変えると一瞬で智弘の下までより巨大な手を振り降ろす。


「智弘ーーーーー!」


間に合わない!

俺のスピードでは到底間に合わない。

智弘も恐怖で顔が引きつる。

逃げることが出来ず左腕を上げ体を庇うのが精一杯だった。

あの鋭い爪が振り下ろされたら一溜まりもない。


デブ悪魔の右手の爪が鈍く光、振り下ろされた瞬間!


ガキン!


と金属同士がぶつかり合うような音が響いた。

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