第228話 合流


僅かに残った、かつて赤城だった黒い塊と崩れ落ちた冠を集め埋葬し、その現場を後にし装甲車でナミラーを目指すことにした。

今回もガルメニアの王都まで行くことは叶わなかった。

どれほど遠いのだろうか?

フェルナンドに復讐するなんて夢のまた夢。


移動のためにマジックランドセルから装甲車を出す。


「「「「凄い」」」」」


井原をはじめとする女子たちから驚きの声があがる。

俺は勝ち誇った顔をする。


「その顔、ムカつくーーー!!」


篠原がすかさず反応する。


「どうだ! これがお前が馬鹿にした『キッチンセット』のオマケのマジックランドセルだぜ!」


「いや、装甲車!」


思わず俺はガクッとしてしまった。

いつか篠原をぎゃふんと言わせてやる!!


「装甲車は山中のコリレシア軍からちょろまかしてきたんだよ!」


「お前たち山中に会ったのか?」


「あぁ、セキジョーダンジョンというところであった。

 鈴木にも星野にも会った。

 多分、鈴木も星野も死んでいると思う」


「思うって!」


井原が話しに加わってきた。


「鈴木はルホストの町と一緒に。

 星野はズガーンダムごと埋めた」


「エッ! お前たち、あの二人を倒したの?

 倒せたの?」

井原は驚く。


「鈴木はワレトラマンにさえなっていなければ、いくらでも何とか出来る。

 ズガーンダムは七海が俺を助けるために穴に落とし埋めた。

 七海がいなかったら俺は踏み潰されていた。

 その前にも七海に幾度となく助けられているけどな」


七海がリッチとして復活?してガルメニア兵士から助けてくれた事を思い出した。

あの時、七海が魔法を撃ってくれなければ、今、ここにはいないだろう。


「白田、お前たちも色々大変だったんだな」


「これで終わりが良ければ大冒険になるんだがな。

 女子はこれで全員になるのか?」


井原は黙って頷いた。


今いる女子は七海、井原、栗原、篠原、高沢、姫川、小幡、芦沢の8名。

さっき赤城に3人がやられたから逃げ出す道中で4名失ったということだ。


「俺たちよりお前のたちのほうが大変だったんじゃないか」


「オークの集団に襲われ、惨たらしく・・・・・・恐怖に耐えられなかった」


多分、責任感の強い井原が一人でまとめていたのだろう。

小うるさい姫川や小幡を引っ張り苦労したのだろうと俺は勝手に想像した。


「なぁ、井原。

 そのオークはどんな服着ていた?」


智弘が隣にやって来た。


「服?」


井原は少し右上を見ながら思い出しているようだった。


「鎧を着ているオークと破れた軍服にヘルメットを被っているのがいたわ」




!!!


思わず智弘と顔を見合わせてしまった。



コリレシア軍のオーク。

いや、元コリレシア兵士といったほうが良いのだろうか。


「マズイな」


智弘がつぶやく。


「なに?どうしたんだ?」


井原が俺たちの顔を交互に見やりながら尋ねると智弘が答えた。


「コリレシア軍人はハルフェルナに来るとオークになるんだよ!」


「なんだ、ぞのファンタジー設定は!」


「剣と魔法の世界なんてファンタジーみたいな物だろ!

 何でも心の卑しい異世界人はハルフェルナに来るとオークになるそうだ」


「正しくファンタジーじゃないか!」


「お、さすが『腐女子!』 異世界設定に詳しいな!」


「『腐女子』、言うな!!」


「それで問題なのは、そのコリレシア人オークがガルメニアの作戦なのか脱走兵なのかだ」


「「脱走兵?」」


俺と井原は思わず声を合わせた。


「ガルメニアの作戦なら何らかの意図がある。

 その意図を読むことができれば推測できるかもしれないが、そうでなかった場合、意図も作戦もないからな?

 何がどうなるか予測しにくい」


「すげーーーさすが智弘! そこまで考えるのか! 現代のチョ葛コー明!」


「おいおい、やめてくれよ。あんなチャイ国のファンタジー小説と一緒にしないで欲しいな」


「水原! 私のコー明様を侮辱するのか!!」


「なんだ井原、ファンなのか?

 お前に言っておくが、お前の大好きな『四国志』は史実じゃないからな!

 歴史をなぞったファンタジー小説だからな!

 あのストーリーを鵜呑みにするなよ!」


「うぐぐ!」


井原が唸る。


「あんな空城の計なんて、あるわけ無いだろ! 

 それどころかコー明は何度も敵国へ遠征をして国力を落とした無能者だぞ!」


「水原!! お前、そこまで言うか!!

 私のコー明様を愚弄するのは止めろ!!」


「これだから『腐女子』は駄目なんだよ!

 『真のオタク』というのはストーリーと現実の両方を知っている者を言うんだよ!

 ゲームやらファンタジー小説しか知らない奴は『ニワカ』って言うんだよ!

 『真のオタク道』を舐めんなよ!!」


「うぐぐぐ!」


より一層、井原は唸った。


「おいおい、止めろよ!

 お前たち二人、仲悪いな!

 なぜ、そんなに仲が悪いんだよ!

 同族嫌悪ってやつか?」


「「違う!!」」


智弘と井原は声祖合わせ否定した。


「何だよ! 仲、いいじゃんか!」


「「良くない!!」」



「チョ葛コー明や同族嫌悪の話はいいから、そうでなかった場合、というのは?」


空気が読める俺は話を戻すために智弘に尋ねると


「う、うーん、脱走兵ということだ」


と一度咳ばらいをした後に智弘は答えた。


「脱走兵?」


「そう。

 コリレシア軍は現代でも最も規律の低い軍の一つと言われているからな。

一人二人くらい脱走していても不思議では無いだろ。

 それどころか1万人いるはずだから100人単位でいてもおかしくないぞ」


「え! 銃を持っているんでしょ!

 危険じゃない!」


「危険も危険!

 奴らオークになるし死ぬとゾンビになってゴーストになるんだよ。

 一番恐ろしいのは死んでゾンビになったときかもしれない。

 噛みつかれた人間はゾンビになっていくだろうから」


智弘が井原と篠原に説明する。


「それは怖いな」

と篠原が答えた。


「うん、ヤッパリ、お前の偉そうな話し方とイラッとする態度、水原なんだな」

としみじみ井原が答えた。


「そう言っただろ!」


「なぜ、子供になったんだ?

 王城で別れたときは、キモいヘンタイだったのに」


「女神の祝福のせいだよ。

 時間の経過と共に背が縮んでいったんだよ」


!? 智弘が嘘をついた。

魔法少女になったのは時間の経過ではなく俺のスキルだ。

俺の作ったものを一定回数、食べると女体化が完了した。

なぜ嘘をついた?

それは井原たちを信用していないから嘘をついたのだろう。


智弘は俺たちの側から離れると、友達と話している七海の近くへ行き手招きして友達の輪の中から七海を呼び出し何やら話しをしている。

多分、俺のスキルの事を言わないように口止めをしているのだろう。

それが終わると栗原に捕まっている将太の元へいくと力ずくで栗原を引き離し同じように。

そして、則之にも同じように話をしている様子だった。



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