第190話 マッドサイエンティスト ゲンガーヒ・ラーチ


将太がとある事に気がついた。


「ちょっと待ってよ。現代日本で使えるって・・・・

 茜ちゃんって魔王や強いモンスターを倒しちゃうくらい強いんでしょ!

 その力使えたら・・・・・

 世界征服していそうな気がするんだけど・・・・」


「将太!お前、サラッと酷いことを言うな!」


・・・・・・でも、我が妹ながら否定できないのは何故だ!!


「拙者らが戻ったら世界が変っているでゴザルか?」


「いくらなんでも普通の女子高生がそんな大それたことはしないでしょう」


「七海、お前は茜様をよく知らないからそんな平和な事を言っていられるんだよ」


「お前ら!!俺の可愛い妹の悪口はその辺にしてもらおう!!」


と話しが変な方向へ逸れたので釘を刺しておいた。


「まぁ、俺たちが現代世界に戻ったとき茜様が征服していたら、その時、考えよう」


智弘が無責任な事を言うが、俺たちには何も出来ないのだ。




「前から疑問に思っていたのだけど、僕らより後から転移したはずの茜ちゃんが2000年前に転移しているのは何故かな?」

将太が疑問を呈すると。


「女神様が『女神の間には時間の概念が無い』って言っていただろ。

 何かしら理由が合って俺たちはこの時代へ、茜様は過去へ飛ばされたんだろうと俺は考えているけどな」


「俺たちは今、茜ちゃんは過去か・・・・何か理由があったのかな?」


「女神様も茜様に過去へ行ってもらって魔王を討伐して欲しかったんじゃないか?

 茜様なら魔王の一人二人赤子の手を捻るように倒しそうだからな」


「おっと!智弘! 茜ちゃんの悪口はその辺にしてもらおうか!」


「もう一つ疑問なんだけど。茜ちゃんは一人で転移していたのかな?

 僕たちと同じようにクラス単位とか?」


「クラス単位は3,40人はそうそう無いと思うでゴザルが5,6人でならありそうでゴザルな」


「ロッシさん、勇者・茜さまに仲間はいなかったのですか?」


「『勇者・茜さま』の物語はいくつかあるのですが、どれにも仲間については書かれていません」


「でも、アオ君。詩織ちゃんや加奈ちゃんなら絶対について行くと思うんだけどな。

 いつも一緒にいるし、一緒に巻き込まれて転移していそうな気がするんだけど」

と将太が俺の方に顔を向け話した。


「寂しがりやの茜ちゃんのことだから一人とは考えにくいな・・・・・

 加奈ちゃんや詩織ちゃんなどと旅をしそうだけどな。

 転移できるのが茜ちゃん一人だったのかもしれないし・・・・

 友人を巻き込みたくは無かったのかもしれない」


「我輩の後輩の松平千代が茜殿と同じクラスでゴザルよ」


「あの剣道少女か! あの子が一緒なら心強いだろうな。

 県でも有数の腕前だろ!」


「そうでゴザルよ。全国大会レベルでゴザルよ」


「戦闘職だけでなくハルフェルナの歴史に貢献したような人はいませんか?」

智弘がロッシさんに聞くと


「多分、その質問は転移者を指していると思うが」


とロッシさんが言うと智弘は黙って頷いた。

ロッシさんは少し考え。


「誰が作ったとは伝えられていないが、この世界で最初にポーションなどを作った者は歴史に貢献してるだろうな。

 茜さまたちよりも前からあったと言われているがね。

 そのポーションが元になってハイ・ポーションやアンチポイズン・ポーションが作られたのだよ。

 マジックポーションは革命的な発明だな」


ロッシさんは一呼吸おいて

「一人、悪しき発明家とかマッドサイエンティストと呼ばれる者がいた。

 ゲーンガーヒ・ラーチという危険人物だ。

 こいつは判断に困るような人物で麻酔を発明したかと思うと輸血などというとんでもない事を行った危険人物だ」


ハルフェルナは輸血は禁忌なのか!

俺たちの世界でもある宗教では禁じられているからな。


「この男はガスリンというとんでもない爆発物を作り一つの町を破壊したり爆発する黒い粉も作ったと言われている」


え!?ガスリンってガソリンだよな。

俺は智弘と顔を見合わせた。


 

「ゲーンガーヒ・ラーチか・・・

 ドイツンダ人っぽいな。そいつは転移者ですよ。

 それらは俺たちの世界の歴史を変えた大発明ですよ!」


「こんな危険なものがか!!」


ロッシさんは驚く。

魔法にばかり頼ったことの弊害なのか。

物理、化学が禁書になってしまうのも分からないでもない。

俺たちの世界とは考え方が違うんだ。俺たちの世界とは。

自分達のメジャーでハルフェルナを計ってはいけない。

ハルフェルナでは俺たちの常識の方がおかしいのかもしれない。

俺たちの現代世界でも魔法というものがあれば科学は発達していなかったのかもしれない。


「ガソリンがあるという事は軽油や灯油も精製することが可能なはずだ!

 ロッシさん、そのガスリンというのはどこで作っているのですか?」


「いや、ガスリンは危険すぎて5,600年前に作られて以降生産されていないんだよ」


「そ、そうなのか! 俺たちで作るしか無いか・・・・・」

智弘が残念そうに言った。


「が、昔作ったものがジーコのところに保管されているはずだ」


「ジーコというのはネーナのお父さまでアルファンブラ商会の会長です」

とアレックスさんが説明してれた。


「あいつのところでも危険すぎて保管に苦労しているとか言っていたはずだ!」


「ロッシさんはネーナさんの父上と仲がいいのですね」

とロッシさんに聞くと


「ジーコは私の弟のようなもんだったから。

 マイソール家とアルファンブラ家は大昔から一蓮托生でな。

 うちのじいさんはアルファンブラ家から嫁を貰ったし、曾々ばあさんの姉はアルファンブラ家に嫁いでいるし。

 親戚なんだよ」


そりゃ、ネーナさんとアレックスさんが子供の頃からの付き合いというのも納得だ。


俺たちはコリレシア軍からちょろまかしてきた装甲車とトラックの燃料をどうやって調達するかを悩んでいたがアルファンブラ商会にあるのなら、上手くいけば譲ってもらえるかもしれない。

この後、アルファンブラ商会へ行ってみる事になった。


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