第112話 魔王ゴキング
「ウギーーーーー!」
加奈は叫びながら錯乱状態に陥り、茜は引きずられるように引っ張られていた。
「加奈、加奈、ちょっと落ち着いて!」
と茜は体勢を入れ替え徐々に足に力を入れ踏ん張るようにして加奈の暴走を止めた。
「はい、ストップ、ストップ。加奈、しっかりして」
と、加奈の頭に空手チョップを見舞った。
「あ、あ、茜? 私は・・・・」
「ア~良かった、加奈が正気に戻った」
「虫は?虫は?」
「まだ城の中よ」
「うが~~嫌だ。帰りたい」
「もう城の奥深くへ入っているわよ」
そこへ、茜と加奈を追った詩織やアルファがやって来た。
「加奈殿、大丈夫ですか?」
「加奈ちゃん、大丈夫?」
「あ、あ、ありがとう。何とか冷静さを取り戻したわ」
コツコツ
コツコツコツ
コツコツ
と、そこへ足音が聞こえてくる。
暗闇から2mサイズ物体が近寄ってきた。
黒い体躯、長い触角、脂ぎった流線型のボディ・・・・・・
「ようこそ、我が城へ」
「うぎゃ~~~ ゴキ、ゴキが出た~~~」
「このゴキ、しゃべるわ~~」
「キモーーーーゴキが親玉なの?」
「か、か、帰る。私は帰る!!」
と茜は背中を向け逃げようとするが
「ダメよ!茜!!」
加奈が茜の手を掴んで話さない。
「だ、だ、だ、って、ゴキブリよ!!」
「貴様ら無礼だぞ。我が種族こそが虫の中の王だ!
我こそがこの城の主 魔王・ゴキングである!」
「なんだか偉そうなゴキブリですね。私が一刀両断にしてみせる」
言い終わるとアルファがゴキングに斬りかかったのだがアルファの剣を素手で掴み剣ごとアルファを投げた。
城の壁に激突してしまった。
「人間風情が私に敵うわけないだろう」
と軽くあしらう。
「王子!!」
千代が剣を抜き斬りかかるがゴキングは素手で剣を掴みアルファと同じように投げ捨てた。
「ゴキのクセに生意気ね! 私の魔法で燃やす!!」
加奈がファイヤーボールを唱えゴキング放った。
綺麗に命中したが何事も無かったように、
「そんなもの効かないよ。人間など我が一族の敵ではない!」
ゴキングがファイヤーボールを詩織、千代へ向けて撃ってきた。
詩織は咄嗟に魔法障壁を唱え防ぐ。
「このゴキブリさん、魔法使える!! 生意気ね、ゴキのクセに!!」
珍しく詩織が辛らつな事を言う。
詩織も相当精神的にきているようだ。
「いやよ、いやよ、ゴキだけはイヤ・・・・・・」
茜が座り込んでしまった。
ゴキングは羽を広げ宙に舞う。
「うぎゃ~~~、ゴキが飛んだ。ゴキが飛んだ~~~~!!」
茜はいっそうパニックに陥った。
飛んだゴキングは空からフレイムアローを次々と撃ちこんでくる。
それを詩織は右手に杖を持ちながら両手を広げ魔法障壁を大きく展開しみんなを守るのであった。
なおもゴキングはフレイムアローを撃ってくる。
魔法障壁内には
パシン!
パシン!
とムチで叩かれるような音が響く。
かれこれ1分近くフレイムアローが打ち込まれる。
「だ、だ、ダメ、もう持ちこたえられないわ」
加奈はなんと茜を蹴飛ばした。
「いけーーー茜!」
「イヤーーーーーー!!」
着地したゴキングのもとへ転がっていった。
すぐさま立ち上がりタナの剣を背中から取り出し。
「キモーーーー!」
と叫びながら斬りつけた。
ゴキングは素手でタナの剣を受け止め掴んだ。
そして、見合った。
「キモーーーー 口がグジュグジュ動くーーー!!」
「キモイとは無礼な!」
「いや~~~、しゃべるな!!」
「貴様、無礼な女め! 私の夕飯にしてやる!」
「しゃべるな~~! お断り!!」
一度離れて、今度は力を要れ斬りかかる。
またもや剣を素手で受けようとするが今度はゴキングの腕が一本ぶった切られる。
「うっ!」
と斬られた腕を押さえる。
「小娘、よくも我の腕を!!」
というとゴキングは口から液体を吐き出し、茜はそれを顔面で受けてしまった。
「ぎゃーーーーーーゴキ汁!! ギャーーーーーーーーーーーーー」
ついに茜の精神的レッドゾーンの針は壊れたようにグルグルと360度止まることなく高速回転状態に入ってしまった。
「バカな! 溶けないだと! お前は人間では無いのか!!」
もちろん、茜はすべての耐性をMAX状態でもっているので溶けるはずもない。
精神耐性も持っているのだが・・・・・
虫など気持ち悪いものに対しいては精神耐性よりも本能が勝ってしまうのであった。
「ギャーーーーー ギャーーーーー ゴキ汁!!」
茜はタナの剣をメッタヤタラ振り回した。
パシュ!
パシュ!
バシュ!
振り回すたびに真空刃が当たり一面に乱舞するのであった。
「茜、落ち着け!!」
真空刃はゴキングの方だけではなく加奈たちの方まで飛んできた。
加奈も魔法障壁を張って何とか防いでいる。
「ギャーーーー!!ぎゃーーーーー!ギャーーーー!ゴキ、ゴキ!ゴキ汁、キモーーーーー」
真空刃の何本かがゴキングに当たる。
ヒュン!
ヒュン!ヒュン!
バシバシバシ!
「うわぁ~~、止めろ!」
ゴキングの体に乱れ撃ち、いや、パニック撃ちをした真空刃が何本も当たる。
「ギャ~~~~~~! ゴキゴキゴキ!!」
「うっ!」
「ぎゃ~~~~~~! ゴキ汁、キモーーー」
「うがーーーー」
茜がギャーギャーと悲鳴を上げるたびに真空刃がタナの剣から放たれる。
正確に言うとタナの剣が真空刃を出しているのではなくパニックになった茜が剣を振るたびに音速を超え衝撃はを出しているのだ。
真空刃によりゴキングの体が刻まれていく。
腕がもげ触覚が切れ、今や両羽ともモガレ・・・・・・
口には出来ないモザイクを掛けたほうが良い状態になっていった。
城も至るところに真空刃が当たり城壁を破り外の日差しが中に入ってきた。
なおもタナの剣を振り続けると真空刃が竜巻状に変化した。
「茜!!、もう止めろ!!」
「茜ちゃん、正気に戻って!!」
加奈と詩織は魔法障壁を再度、周りに展開した。
二人の叫び声が聞こえない状態の茜はなおもタナの剣を降り続ける。
「ギャーーーーゴキーーーーー!」
竜巻はゴキングを飲み込み城の天井へ激突し天井をも突き破ってしまった。
なおも竜巻は巨大化し天井すべてを、城壁のすべてをも巻き込み天高く貫いた。
天を貫いた竜巻は遠くの村々でも見えたという。
「ぜーーぜーーーぜーーーー」
茜が肩で息を吸い、吐いた。
ようやく落ち着きを取り戻したときには、城はほとんど
床にある石畳で『ここには建物があったのでは?』という状態になった。
ドスン!
空から黒い物体が落ちてきた。
それゴキングだと思われるものであった。
口に出して言う事は不可能なくらいモザイクが必要な状態になっていた。
ピクリともせず絶命した状態にしか見えなかった。
「茜ちゃん、これ生きているの?」
と詩織が聞く。
「魔王の反応が消えたから、死んだのだと思う。ぜーーーーぜ~~~~」
と肩で息を吐きながら茜は答えた。
「魔王って倒すことが出来るの?」
と、加奈が答えた瞬間、ゴキングは虹色に光、そこには巨大な扉が出現した。
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