第54話 説教


翌日、魔道師討伐前に少しでもレベルを上げておくために朝からモンスターを狩りに出かけた。


魔道師を避けるためにいつものように東方面へ赴いた。

最近では3食俺が作った料理をみんなに食べてもらっている。

以前は一回作ればレベルが上がっていたレベル40を越えた辺りから1日1回しか上がらない。

それでも他の職業より圧倒的に上がり易いのは変わりない。

七海はレベル15だそうだが・・・・・・人間化の数値以外ステータスに変化は無いそうだ。

他のみんなはレベル27,8でステータスもだいぶ上がっている。

それにプラスして俺の料理チートでステータスのすべてが30から45ほど上がっている。


朝食はあらかじめ作って寝かせておいたパスタを作る事にした。

ミートソースにするか、ボロネーゼにするか聞くと七海が即答でミートソースが良いと答えたのでミートソースと相成った。

ミートソースもボロネーゼの大体似たようなものだがミートソース方がトマトが多く平打ち麺を使うのが正式なボロネーゼなのだ。

ソースもミートソースはデミグラスソースをベースに、ボロネーゼはトマトケチャップをベースに作られることが多い。


最近では新メニューを食べた後に必ず智弘と一緒に金換算をしている。


「これの利益率は?」

「いくらなら出せる?」

「原価だけでなく労働コストを忘れるな」

「この料理は手間が掛かるからな」



「二人とも悪い顔をしているよ。悪徳商人みたい」

と将太に呆れられている。



朝食を食べ終わりあたりを散策すると5頭ほどのオックスブルがいた。


「オークばかりじゃだと戦い方の勉強にならないからオックスブルを狩ってみないか? 

オークよりレベル的には低いし問題なく行けると思う」


と、智弘が判断した。


「智弘がそう判断したのなら俺は賛成だ」


などと話しをしていたらオックスブルたちはこっちに突進してきた。

土煙を上げ、地鳴りを轟かせ、ブモーーーーーと雄たけびを上げながら驀進してきた。


智弘はマジカルなんちゃらを伸ばし、則之はくじら君を構えた。

俺はサックブラッドナイフをイメージし呼び寄せ中華鍋を楯代わりにして構えた。

突進してくる1頭にナイフを投げつけた。


スカッ! 


当たらない。


まだ30mほど距離がある

焦らず2投目を投げる。


シュッ!


掠った!!が、掠っただけでは血を吸ってはくれなかった。


もう一度ナイフをイメージする。


10mほどの距離にオックスブルがやって来た。

でかい。日本にいる牛のより3割ほど大きいだろうか。

そんなヤツがこっちに向けて突進してくるのだ。

恐怖に駆られないわけがない。


「焦るな、焦るな。これが最後のチャンスだ」


と自分に言い聞かせ狙いを定めた。


グサッ!


見事、眉間に命中!


オックスブルは足が縺れるように倒れたがスピードが付いているため、その場では止まらず行き倒れながらも俺に体当たりをする格好になった。

やばい、あんなデカイ物が直撃すれば・・・・・

おっちんじゃうかも?少なくとも10mくらい飛ばされるかも。

とっさに中華鍋を前に出しオックスブルの体当たりを防いだ。


「ゴン!」


と重い音がしたが吹き飛ばされることもなくその場に立っていた。

しかも、腕に衝撃がほとんどない。

あれだけの質量がぶつかれば腕が折れてもおかしくないのだが。

体も鍋もなんともなかった。

中華鍋が衝撃を吸収してくれたのだろう。

さすが!女神様からの贈り物だ! これは良い物だ。


他のオックスブルは一頭を則之がくじら君でぶった切り、一頭を智弘がマジカルなんちゃらで頭をぶっ叩き、スプラッター状態。

残り2頭は七海のフレイムアローで串刺しにされ絶命していた。


「昼はオックスブルのステーキにするか?」


「いいね~昼間からステーキとは豪勢ですな~」

「嬉しいでゴザル」

「僕も賛成」

「私も異議なし」


「そんじゃ、1頭解体するわ」


「碧、棒と玉もちゃんと取っておけよ!」


「え!!それはいらないだろう」


「オックスブルも滋養強壮材として人気があるんだよ」


「マジかよ!! どんだけハルフェルナ人は、ご盛んなんだよ!!」


「白田君、私にセクハラした罰ですよ~~~」


七海が楽しそうに言った。多分、笑っているのだろう。



最近では俺が解体している間、みんなにはカレー用の仕込み、ジャガイモと人参の皮むき・カットをお願いしてある。

いくら料理スキルがあっても100皿分の食材を一人で用意するのは骨が折れる。


と、そこへ将太が助けた神官のパーティーがやって来た。

人間の女戦士が


「おっ!BLパーティじゃないか。あの時はミリアを助けてくれてありがとう」


ぐはぁ!マジで定着しているのか!!BLパーティー・・・・・お願いだから止めてくれ。


「アマネ、聖女様のパーティーに失礼ですよ」

神官はミリアさん、人間の女戦士はアマネさん。

ハルフェルナに来て初めて日本人らしき名前を聞いた。

が、当のアマネさんはバリバリの金髪だった。


「聖女様。あの時はありがとうございました。聖女様のおかげで私は命を繋ぐことができました」

とミリアさんは深深と頭を下げた。


「神官様、そんなお礼なんて要りませんよ。

僕らのパーティは『困った人がいたら助けるのが当たり前!』がモットーですから」


「聖女様、神官ごときに様は要りません。ミリアとお呼び下さい」


「聖女の出来損ないの僕より神官様のほうが立派では無いですか」


「そんなことは御座いません。神官は世界に何人いるか分かりませんが、聖女様は5人と居ませんから」


「聖女様、諦めてください。どの道、聖女様と呼ばれるか、聖女・将太様と呼ばれるかの二択ですよ」

とアマネさんが言う。


「止めてください。子供一人助けることが出来ない半端なヒーラーにしか過ぎませんから」

と辛そうに将太は言った。


「アマネ、ミリア、早いよ。待ってくれよ」

と少し遅れて獣人の戦士と魔女っ子がやって来た。


「聖女様。お久しぶりです。あの時はありがとう。僕はライム。よろしく」


「魔法使いさん、こんにちは」


「聖女様、ありがとうな。俺からも礼を言っておくよ。俺はサリム、よろしく」


獣人の戦士さんは『俺っ娘』かよ。


「あれ?兄ちゃんのところ気持ち悪い格好をした男が一人いなかった?

 いつもローブを着ているんだけど戦闘のときになると脱いでヘンタイチックな格好しているヤツ。

 あまりの気持ち悪さにクビにして可愛い女の子を入れたのかい?」

獣人のサリムさん情け容赦のないブッタ斬りが智弘の自尊心を切り裂く。


「ブッ!」

あまりのメッタ斬りに智弘が吹きだした。


「あの~・・・・・あの気持ち悪いの・・・・コイツなんです」


と幼女化した智弘を指差した。


「え===」「エーーーーーーーーー!」「嘘。嘘でしょ」「エッ!」


「う、ううん。あれは世を偲ぶ借りの姿。

 聖女様に変な虫がつくと困るから、あんなキモイ格好していたの。

 キモクて誰も近づかないでしょ。

 本当の姿はこっちの美幼女よ」


智弘が咳払いして話し始めた。

智弘の嘘八百、変わってね~~


「そ、そうなんですか。聖女様のパーティーも苦労があるようですね」

神官のミリアさんが答えた。


俺たちも一通り自己紹介が終わったところで


「みなさん、少し早いですが解体が終わったら昼ごはんにしようと思うのですけど、一緒にいかがですか?」


「え、いいの?悪いね~BLカレーかい?」


ぐはぁ~ サリムさん、それやっぱり定着しているんですか。勘弁してください。


「丁度、オックスブルを解体しているんでステーキにしようかと思っています」


「マジか! 遠慮なくご相伴にあずかるぞ! 俺たちは遠慮しないぞ!」


「どうぞ、どうぞ。オックスブル一頭分行きます?」


「俺はその少女にキチンと詫びを入れさせてもらわないといけないから」


「いいんですか? 私、聖女様ともっとお話ししたかったから」


「私は魔法使いさんと魔法談義をしたい」


「私はでかい剣を持っているアンちゃんと一度話しをしてみたいと思っていたんだよ」



サリムさんたち学校を18で出てから5年近く冒険者家業をしている。

ナミラーの女性冒険者パーティの中では最高ランクだそうだ。

全員がCランクでチームの総合力はAクラスに相当するそうだ。

俺たちが全員がGランクという事を話したら驚いていた。

Gランクで数匹のオーク、オックスブルを狩れるということは異常なことらしい。

Gランクはゴブリン、スライムと相場が決っているようだ。

オークジェネラルの件は黙っているようにしよう。

そして、俺が魔力がなく冒険者ギルドに加入できないヘタレだということを話すといっそう驚かれた・・・・

が、そんなへなちょこの俺が前衛に立って戦うことを話すと、いきなり空気が変わり正座させられメチャクチャ怒られた。


「お前はバカか! そもそも魔力が無い人間が前衛に立つどころか戦おうと思うことが間違っている!!

 お前のような戦闘に向かない者を守るのが冒険者の仕事だ!」

と、アマネさんに大目玉を食らう。


「お前死ぬと 聖女様、悲しむ。無理をするな」

魔女っ子ライムさんにお叱りを受ける。


「ダメです。戦闘職でない人は戦いに参加してはいけません」

神官ミリアさんに止められる。


「お前が死んだらBLカレー食えなくなるだろ!」

・・・・・サリムさん、説得力ないです。



若干一名は微妙にズレているがパーティのみなさんから説教を受けるのであった。

  • Twitterで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る