第40話 首都到着
「ここが、首都か……」
クエリーシェルが呟くのを聞きながら、昔を思い出して懐かしい感情を抱きつつも感じる違和感。兵が編隊を組んで包囲網を敷いていることもそうだが、どこか物悲しいような寂れた印象を受けた。
(こんなところだったかしら)
もっと荘厳で活気に満ちていたはずの首都、並びにそこに聳え立つモットー国の城。悠々と構えていたはずのそれは、どこか悲しみに満ちているような錯覚を覚えて、ギュッと拳を握った。
(私が師匠の仇を討つ……っ!)
そして、メリッサから預かった手紙を渡さねば、と懐に仕舞い込んだ手紙を確認する。師匠の意志を伝え、この国を変えなければ。いや、正確に言えば元に戻す、だろうか。
(師匠が築いた過去のモットー国のように、人々が平和に他国に干渉することなく、自国の特産品を世界に届ける国に戻す)
個人的な他国干渉だと罵られようが、これは私が決めたこと。もちろん、帝国の思惑があるからこその介入ではあるが、とはいえこの国は今ここで変わらなければならない、と思ったのは事実だ。
だからこそ、先程の少年に言われたように例え罵倒されようが私は私の意志でこの国を変えてみせる。師匠の弟子として、同盟国だったペンテレアの姫として。
国民達が苦しまない、よりよき世界を築くために。
「[親父達はまだのようだな]」
シオンが前方からこちらにやってくる。先遣隊の報告によると、ぐるっと城壁を囲むように兵が待機しているそうだ。
さすが本拠地なだけあって、弓兵、槍兵、騎馬隊、なんでもござれといった感じらしい。
「[どうする?先に攻め込む?]」
「[んー、そうだな。人数は多少心許ない気もするが、どうにかならない数でもないだろう。そのうち親父と兄さん達も来るだろうしな]」
「[そうね]」
恐らくもう1つの街でも地下迷宮があっただろうから、それで手こずっているに違いない。私達はギルデルの助力があったからすぐに攻略できたが、不慣れな中でアレを攻略するのは難しい。
下手に罠などにかかってしまったら一瞬で命を落とすことになるだろう。
(みんな無事だといいけど。はたして全体でどれほどの人数が残るか)
少数精鋭、というと聞こえはいいが、実際人数差は勝敗をわける大きな決め手ではある。いくら強者といえど、体力には限界があるし、数の暴力には勝てない。
(まぁ、セツナさんはこの常識は通用しないんだろうけど)
あの人はまったくもって例外の化け物級だ。1人で一体何人無双したんだ、というくらいの実力で、下手したら小国くらいなら簡単に陥してしまうほどの実力はあるだろう。
そのセツナが味方についているというのは非常に心強いが、全てをあの人1人でどうにかするわけにもいかないから、自分達でできることは自分達で頑張るしかない。
私が黙って考え込んでいると、シオンの報告などに耳を傾けていたクエリーシェルが口を開く。
「とりあえず、城壁周りの者から掃討していこう。中は幾重にも兵が控えているだろうから、その辺りも慎重にせねばならぬが、現状おされているという焦りもあるはずだ。行くなら一気に攻め込むのがいいだろう」
「そうですね。畳みかけるなら、今と言ったところでしょうか」
「あぁ。……リーシェはあまり前に出るなよ」
「もちろんです。後方支援はお任せください」
後方からならスリングで投擲して戦力を削いだり敵を撹乱したりはできるだろう。乱戦になったときは厳しいかもしれないが、そのときは連弩でどうにかすればいい。いざとなれば棍もある。
(私の一番の目標は死なないことだものね)
「わかった」
「[シオン。行くなら行きましょう?こちらはいつでも準備できてるわよ]」
「[よし、では行くか。ここからは消耗戦だ!斬って斬って斬り伏せろ!!体力が続く限り、攻め落とすぞ!!]」
おぉおおおおおーーーー!と兵達が一気に声を上げる。
その声に反応するように、こちらに敵兵達の視線が向く。
「[さぁ、行くぞ!!!]」
シオンの掛け声と共に敵兵に向かって馬で駆ける。
「我々も行くぞ!くれぐれも気をつけろ!」
「はい!!」
頭上からいくつも降り注いでくる矢の雨を避けながら、クエリーシェルのあとについていく。周りの断末魔を聞きながら、私はしっかりと前を見据えた。
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