第13話 淫夢
「ん、ふ……っ、はぁ、ケリーさま……」
「はぁ、リーシェ……っ、もう、もういいだろうか?」
切なそうな表情のクエリーシェルが私の顔を覗き込む。それが愛しくて、思わず彼の頬を両手で包むと、そのまま引き寄せて唇を合わせる。
暑くて、とろけそうで、気持ち良くて、頭がくらくらしてどうにかなりそうだった。触れる肌からの体温が熱いくらいに高まっていて、それが呼び水になってさらに興奮する。
引き締まった肌が自分を覆うように包み込み、心地よくてまるで溶けて一緒になってしまいそうだった。
「ケリー様……、きて……」
「あぁ、いくぞ、リーシェ……」
それから……
◇
「はっ!!!」
ガバリと勢いよく身を起こす。外からは陽が
「あぁああああぁああ……!」
我に返り、羞恥で身悶える。あまりにリアルで破廉恥な夢を見てしまい、思わず発狂したように意味もなく大きな声を上げた。
(私は一体どんな夢を……っ!!)
やけに生々しく、感触も匂いも溢れる何かもまざまざと思い出せてしまう自分が恨めしい。己の唇に触れれば、クエリーシェルと重ねた唇の柔らかさを思い出してしまって、カッと顔が熱くなった。
(しかも、確か前にもこういう夢見た気がするし、あぁもう〜〜〜〜!!)
頭を抱えてジタバタする。欲求不満なのか、それともまさか予知夢!?としょうもないことを考えては頭を振った。
「リーシェ!?大丈夫か!??」
ドンドンドン、と外から大きな音でドアをノックされる。確か真向かいがクエリーシェルの部屋だったから、私の声を聞きつけてすぐさまやってきてくれたようだった。
「け、け、け、ケリー様!??だ、大丈夫です。お気になさらず!!」
「そうか?悲鳴みたいな声が聞こえたが」
「すみません、ちょっと自分でも思いのほか大きな声が出てしまったものでして、なんでもないです!!」
破廉恥な夢を見て、羞恥で発狂したなどとは言えず、適当に誤魔化す。というか、この顔が紅くてパニックな状態を見られたくないし、見せられない。そもそもどんな顔で対面したらよいのか。
「そうか?ならいいが、もし何かあれば言えよ?それにそろそろ朝食だ、程々に支度をして行くぞ」
「も、もちろんです!すぐに用意しますから待っててください!」
慌ててベッドから飛び降りる。そして鏡がある部屋に行けば、髪は乱れて頬は紅潮し、涙目になっている私がそこに映っていた。
「もう、全部聖上のせいよ……っ」
沸々と湧き上がる怒りでわなわなと肩が震える。
もはや八つ当たりと言っても過言ではないが、そうは言っても原因を作ったのはセツナである。
(セツナさん許すまじ……!!)
今日の手合わせでケリー様にボッコボコにされればいいのに、と思いながら、火照った顔を冷ますように洗顔をする。
そして用意された服を身につけ、髪を結わえようとして、ハッと結える髪がないことに気づいて自嘲しながら、いそいそと身支度を始めた。
「お、お待たせしました」
急いで用意したわりには髪の処理が少なかったぶん、手短に終われて部屋を出る。
「いや、さほど待ってない。さて、行こうか」
「はい」
なんとなく顔を合わせることができなくて俯いていると、「どうした?やはり具合が悪いのか?」と肩に触れられ、思わずキャッ!と声が出てしまって、クエリーシェルがビクッと身体を大きく震わせた。
「す、すまない。大丈夫か?」
「あ、はい。大丈夫です。すみません、なんか変な声を上げてしまって」
「いや、それはいいんだが。具合が悪いなら今日は休んでいるか?」
「あ、いえ。大丈夫です。そういえば、今日セツナさんがケリー様と手合わせしてくださるそうですよ」
「そうか、忙しいのに申し話ないな」
「いえ、肩慣らしとか余裕こい……んん、言っていましたので、手加減なしで大丈夫ですよ」
「そ、そうか……?まぁ、出来る限り健闘するつもりだが」
「えぇ、もうボッコボコにのしてしまうくらいの勢いで大丈夫かと!」
「ボッコボコ……はさすがに……」
「いえ!そのくらいの意気でないとあの方は倒せないと思うので!!」
「えっと、ただの手合わせ、だよな?」
クエリーシェルが困惑してるのをよそに、私は彼をけしかけ続けるのであった。
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