第22話 女であること
結局、1ヶ月半後に約半年から1年までの期限で私とクエリーシェルは外交をすることになった。メンバーの編成や必要なものはリストアップさえすれば国王自らが用意してくれるらしい。
「ありがとうございます」
「これだけ至れり尽くせりなんだ、ちゃんと成果は出してくれ」
「それはもちろんです」
今回、表向きには私の里帰りということにすることになった。もし外交で行くなど告知した場合、内通者に勘繰られる可能性があるからだ。
「それと今回の外交とは別件で、浄水の整備をお願いしたいです」
「浄水?」
「前回、毒物が混ぜられたことが問題になりましたが、今後主要な河川に流される可能性はなくはないので、今後雨水を
「なるほど」
「装置自体は簡単に作れますし、船でも雨水を濾過できるようにいくつか積みたいと思います。さすがに、海水を蒸留して真水にするには時間も労力もかかりますので」
一通り濾過や蒸留の話をする。ここの国ではその知識は薄いらしく、2人同じ顔をしながら相槌を打つのは少し面白かった。
下水の整備をしている国はまぁまぁあるが、この国ではあまり機械業などよりは酪農や農業、水産業など自然由来のものが多く、あまり下水に関してそこまで重要視してなかったようだ。
そもそも、今までこのような毒を盛られるという手を使われたことなどなかったのだろう。ある意味平和ボケと言っても良いが、それはそれで治安が安定していることを意味しているので、そこについて追及することはしなかった。
そして、今回このような毒物を使ってきたこと、内部からの瓦解をあちらも使ってきたということは、いよいよ本格的にこちらを攻め込むということも暗示している。
だからこそ、こちらとしてもなるべく早急に手配、根回し、協力を仰がなくてはならない。さすがに今日明日でどうこう情勢が変わることはないだろうが、戦争の火蓋はいつ切られてもおかしくはないことは事実である。
(念には念を入れておくに越したことないものね)
被害は少なければ少ないほどいい。国民に損害が与えられれば与えられるほど、国として機能せず、没落していく運命を辿っていってしまう。
(ペンテレアの二の舞はもう御免だわ)
それから、食器はなるべく銀で揃えることで、メンテナンスは大変だが毒などを検知するには有効であることや、火薬を使った槍やクロスボウなど新たな武器の作製について、海賊対策など色々な部分での話を詰めていく。
「まずはカジェ国に行ってから、サハリ、モットー、ブライエ、アガと主要5カ国を回り、帰国します。カジェは前回のこともありますし、友好国ですので問題はありませんが、サハリやブライエはある程度の条件提示をしなければならないと思われるので、その辺りを決めておいていただければと」
ちなみにカジェは国柄女性が多く、サハリは資源が乏しいので資源供給、モットーは酒好き、ブライエは血気盛んで武力を重んじる、アガは閉鎖的ではあるけれど義を大切にする、など各国の特徴をメモしておく。
また、入国する際の国王からの書状等々も準備してもらうようにお願いし、各国の状況に合わせた友好条件や条約の締結の下地書きなどこちらが融通するもの、こちらが頼みたいことの事柄なども書き出しておく。
「本当、女にしておくのが勿体ないな」
「ありがとうございます?」
しみじみと国王に言われて、とりあえず感謝の言葉を述べておく。まぁ、こういったことを言われるのは慣れている。過去に「女でなければよかったのに」と耳にタコができるほど散々言われた。
よく「女に学はいらない」と側近などから嘆くように
だが、やはり気質は変えようがないらしい。自分でもこのようなことを考えたり実行したりするほうが楽しい。自分でもたまに男に生まれた方が良かったかも、と思うこともあるが、女だからこそできることもあると思っている。
(男は男でしがらみは大きいし)
もし男として生まれたら、私はペンテレアのために奮起して散ったのだろうか。それともおめおめと逃げ延び、それを後ろ指さされただろうか。
(ううん、もしかしたらの話をしても仕方ない。生きている今、これからを考えなくては)
そして、今後の展望、コルジールの行く末について、国王とクエリーシェルととことん話し合ったのだった。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます