第65話 穏やかな一瞬

 宝玉の移動もログアウト場所の移動も終わったし、次は何をしようかね。


「市長、街作りの建材や素材が少なくなっているようです」


 どれどれ……うん、アイテム欄が結構スカスカになってきてる。

 まあ、こんだけ一気に物を作ればそうなるよな。


「わかりました、一度鳳仙さん達に補充が必要な建材や素材を確認してみましょう」


「先ほどお声をお掛けしているので、もうすぐこちらにいらっしゃる頃かと」


 うーむ、さすがはセリスさん。抜かりがないね。


「わふぅう」


 家のワンコは絶賛お昼寝継続中か。


「とりあえず執務室で鳳仙さん達を待ちましょうか」


「そうですね」


「むにゅふぅ~」


  ▼ ▼ ▼ ▼ ▼


「親ぶーん、お待たせだぞ」


「お待たせ、ご主人さま」


「…………」


 ん? ムジィーカさん、なんで鳳仙さんの肩で伸びてるんだ?


「鳳仙さん、ムジィーカさんはなぜそのような状態に?」


「ああ、これね。ロカちゃんが張り切っちゃってね」


 ?


「ムジィーカちゃんを連れたまま凄い速度で移動したのよ。それがどうやらムジィーカちゃんが耐えられる速度を越えちゃったみたいでね」


「ここに着いたら、こんなになってたんだぞ」


 それはなんとも。ムジィーカさん御愁傷様です。


「ま、ムジィーカちゃんならしばらくすれば気がつくはずよ」


 ……。


 そして、ようこそこちら側へ。


「それでどうしたんだぞ、親分」


「ああ、そうでしたね。お呼びしたのは他でもない建材や素材の追加の件です」


「そうね、そろそろ足りなくなる物が増えそうだったから助かるわ」


「今リストを出しますので必要な物を選んで下さい」


 まずは建材生成。


「まずはこれとこれとこれね」


「鳳仙。こっちのももう少し増やすんだぞ」


「そうね、それも必要よね」


 うーん、なんかいい感じだ。


「市長。なにか嬉しいことでもありましたか?」


 ん?


「お二人を見て微笑んでおられたので」


「笑っていましたか?」


「ええ。ロカさんが一瞬こちらを見て、引いてしまうくらいには」


 な!?


「黒いジョークです」


 はあ。セリスさんは相変わらず抉ってくるな。


「お二人とも楽しそうですね」


 んー、でも、なんだろ。


「どうかされましたか?」


「いえ、セリスさんもなにか楽しそうだなと」


 今日のセリスさん、毒は吐いたけど機嫌は良さそうなんだよな。


「楽しそうですか?」


「ええ。なんといっていいか、うまく表現できませんがそんな感じがします」


「…………」


 ん?


「そう……かもしれません。活気が戻りましたから」


 ???

 久しぶり?


「あのセリスさ「おやぶーん!」」


「市長、ロカ様達がお呼びです」


 えーと。


「いえその前に「ぶはぁ!」」


 ムジィーカさん!?


「ろ、ロカ殿これ以上は無理だぞい、儂、死んでしまうぞい!」


「あら、ムジィーカちゃん。やっと気がついたみたいね」


「む。これは主殿、見苦しいところを見せてしまったぞい」


 いえいえ、そんなことはありませんよ。我が同士!


「む? なぜ儂の手をにぎるぞい?」


「いえ、ちょっとした挨拶ですよ」


「ぞい???」


 共に頑張りましょう!


「あらあらムジィーカちゃんってば。ロカちゃん達にやきもち焼かれちゃうわよ」


「ぞい!?」


 へ?


「ぞい!」


 無理やり手をほどかれた!?


「あ、主殿、失礼するるぞい」


 そしてすげー距離を取られた!


「うふふ、冗談よ、冗談。だからそんなにご主人さまから距離を取らなくても大丈夫よ、ムジィーカちゃん」


「鳳仙殿、冗談が怖すぎるぞい。寿命が縮む冗談はほどほどにしてほしいぞい」


「ちょっとしたお茶目よ。それよりもムジィーカちゃんもこっちに来て手伝ってちょうだいな」


「わかったぞい」


「親分、次は素材のリストを開いてほしいんだぞ」


「わかりました」


 ▼ ▼ ▼ ▼ ▼


 素材と建材の補給はこんあところか。


「それじゃ、早速作業にもどるわ」


「行ってくるぞい」


「よろしくお願いします」


 さて、俺は何をしようかね。


「おーやぶーん」


 ん? ロカさん?

 鳳仙さん達と一緒に行かなかったのか。


「どうしましたロカさん」


「親分、もう街の中は見てまわったのかだぞ?」


「いえ、すぐにこちらに来たのでまだですよ」


「なら、ボクが街を案内してあげるんだぞ!」


 こ、この期待のまなざし……駄目だ、俺にはイエスとはいしか選択肢がないみたいだ。


「わかりました。ロカさんお願いします」


「任せるんだぞ!」


 うごっ!

 て、手がつぶれた!?


「それじゃあ」


 うがっ!

 か、肩が。


「あ、あのロカさん」


 手とか肩とかがプランプランなのですが。


「少々てかげ「出発しんこーだぞ!」」


 て、手加減をお願いいた……し……ま……。


 …………。

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