第55話 フリーキック(攻城戦)
さて、契約書にサインをもらったはいいんだがどうやって領地へ皆を送り届けようか。
歩いて移動にしても俺の領地がここから近いのか遠いのかもわからん。かといって住民の死に戻り機能を使うのもなぁ。
さてどうしたもんか。
ん? システムメッセージ?
≪新しい住人の転送準備が整いました≫
なんと! そんな便利機能があるのか。
なになに転送候補一覧から転送したい相手のチェック欄にチェックを入れ、実行を選択か。
なるほど。
それで転送候補一覧はっと…これか。
これを開いてっと。
うん、まあたくさんいるのはしょうがないよね。あとは一人一人チェックをいれるだけだ。
……。
これ一番上にまとめてチェック入れられるボタンとかないのかね?
…………。
やっと終わった。あとは転送ボタンを押すだけか。
「ファウスティーナさん、今から皆さんを私の領地に転送します」
「わかりました。英雄殿よろしくお願いします」
それじゃ転送ボタンをぽちっとな!
おおおお! これが転送か!
一緒でみんな消えて……ないな。なんか残ってる人たちがいるんだが。
「これは一体?」
「奴らはどこに?」
しかもなんか怪しそうな人だなーと思った人たちばかり。もしかしてこれがセリスさんが言ってた忠誠がどうとかってやつか。
十中八九当たりだと思うが、今後の参考のためにもとりあえず確認してみるか。
「あの、混乱されているところ申し訳ありませんが、皆さまもあの契約書に署名していただけたのですよね?」
「も、もちろんです」
「ちなみにそれは
「え、ええ」
ふーん、
ただなあ、セリスさんやソフィアさんとのことを考えると怪しいところではあるが。
「残られた皆様。申し訳ありませんが、今回はご縁がなかったということでお引き取りください」
とりあえずはこの人たちは無しだな。
「お、おいどういうことだ?」
「ふざけているのか? ほかの奴らはどこへ行った?」
「ですから最初に話したように、私の領地に移動していただきました」
「お前の領地とは一体どこだ? なぜ私達だけがここに残っている?」
「私の領地の場所ですか……いったいどこにあるんでしょうね? 私が教えていほしいくらいですよ]
ほんとに地理関係とかさっぱりだ。どっかで世界地図みたいなものが手に入らんもんかね?
「それと、みなさまがここに残られている理由に関しましては、先ほどお伝えしたように今回はご縁がなかったということです」
「貴様ふざけているのか!」
「いえ、ふざけてなど。ただ事実を述べているだけですが」
「もういい! 少々痛い思いをさせて情報を吐き出さぼべらぁ!」
うん、まあ正当防衛ということで。
「貴様!」
しかしこの国の兵隊さんたち、喧嘩っ早すぎるよなあ。
一応この国ではないけど領主を名乗ってるんだ、真意が定かになるまでは様子見とか考えないのかね?
でも、これはこっちとしてはちょうどよかったかな。
どうせ失敗しても死に戻りだ。折角貰った口実、色々利用させてもらおうかね。
▼ ▼ ▼ ▼ ▼
距離にして50メートルくらいか?
ちょっと距離はあるがゴールマウスに比べりゃ的は大きいし、何とかなるだろ。
まずは。
「マーリダーレ王国に次ぐ! そちらの国は他国の領主である私に兵を差し向け、刃を向けた! 私はこの無礼をマーリダーレ王国の宣戦布告と受け止める! 意義があるならば直ちに使者を出されよ!」
宣戦布告だよね。
……。
使者が来る気配はなしか、まあ当然っちゃ当然だよなぁ。どっからどう見ても阿呆の戯言にしか見えないもんな。
だが一応、宣戦布告も和解勧告もすませた。後は……やるだけだ。
まずは1発! 先制シュートぉ!
おお、一撃で吹っ飛んだ。見た目は頑丈そうだったけど、そうでもないのかあのでかい門。
次は……せっかく入り口がすっきりしたんだし、もっと広げてあげようか。
2発、3発、4発!
「敵襲!敵襲!」
お、出てきた出てきた。でも、まあ関係ないけどね。
「敵襲、てきうぼああ」
5発、6発、7発。
「敵はどこだ、どこから撃っでぼぁああ」
ドライブシュートにバナナシュートに無回転シュートぉ。
「くそ、次から次へと! いそげ反撃にぼあああ」
あははは、フリーキック楽しくなってた。
でも、壁がほとんどなくなっちまったな。
「貴様何をやっている! 穢れ人の分際で我が居城に刃を向けるなど!」
お、アッキレーオさんがもう出てきた。総大将がそんなに早く出てきて大丈夫かマーリダーレ?
まあそれはそれとして、次はあの城か。あれだけでかい的ならもう少しは持ちこたえてくれるかな?
まずはあの端っこにある塔みたいやつ!
「な、私の城が。おい貴様やめろ!」
あれ? ちょっとコースがずれた。上の方は少し流れがあるのかね? ならもう少し修正して。
よし、当たった当たった。
「お、おい、やめろ」
でもお城もあんまり頑丈じゃないみたいだいだな。
まあ、だからといって何をどうする訳でもないんだけどなっと!
「お、おい、くそ私の話を聞け穢れ人!」
どんどんいってみよう!
「く、ま、まて」
おっと、中身が見えてるところは避けないと。お城が完全に崩れちまう。
「くそ、騎士団奴を止めろ!」
「は、第二騎士団いくぼほうう」
まあ、そんなわかりやすく出てきたら良い的だよな。
さ、細かいのが出てくる前に、大きいのにどんどん撃ち込んでいきますかね。
「おい、やめろ、本当にやめてくれ。私の城がなくなってしまう」
大丈夫、大丈夫。基本的に外側が壊れてるだけだし。ただお城の断面図みたいにはなっちゃってるけど。
「や、やめてくれ、たのむ。なぜこのようなことをする、貴様は英雄とやらではなかったのか? 一体なにが望みだ」
お、これは話を聞く耳をもってくれそうか? とりあえず要求を出してみるか。
「私が希望するのは食料です!」
「食料だと?」
「ええ、お城の食糧庫へ案内してください!」
「貴様のような穢れ人を城に!」
シュートぉう!
「な!?」
シュートぅ!
「ま、まて! わかった食糧庫から今すぐ食料を持ち出させる。だから攻撃をやめてくれ!」
シュートぉ!
「な」
「食糧庫に案内してください!」
シュート!
「わ、わかった。今すぐ案内の者を付ける。おい、だれかあの者を食糧庫に案内しろ! どうだこれでいいか? だから攻撃をやめてくれ」
えーと、あのごっつい人が案内役? 確実にタダで済ませるつもりはないって感じだな。
「ありがとうございます」
まあそれでもお礼はしないとね。
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