貴方は今日から市長です。は?これRPGですよね?〜皆はMMORPGなのに自分だけ開拓SLGでした〜

ろろ

第1話 ガロンディアオンライン

 最新フルダイブ型MMORPG、ガロンディアオンラインか。


 勧められるがまま買ったはいいが、今時のゲームはすげえな、ヘッドセット一つでできるのか。

 確か何年か前までフルダイブ型の機器って、小型冷蔵庫くらいの装置だったはずなんだが、技術の進歩ってのは凄いもんだ。


『おい、十四郎』


 VRMMOかぁ。


『おい、聞いてるのか?』


 実はずーっとやりたかったんだよなぁ。

 忙しすぎたせいで、フルダイブ型が出てもずっと我慢してたし。


『十四郎!』


 多分ハマるよなぁ。


 まあ、今ならそれも許される。さすがにこの年だ、寝食惜しむまではいかないはずだ。


『じゅっうしろう!!』


「聞こえてるよ」


 相変わらずデカイ声だな。携帯のスピーカーが壊れそうだ。


『ならさっさと返事しろよ』


「色々と感慨に耽ってたんだよ」


『はあ? なにワケわからんこと言ってるんだよ』


「いいんだ、気にしないでくれ」


『それでセッティングは終わったのか?』


「ああ、今さっきな」


『なら早くログインしろよ。それと、特典コードを送るのを忘れるなよ』


 相変わらず楽しく喧しい奴だな。十何年たっても、人間てのはあまり変わらないな。


 ということは俺もそうなのか? まあ、それならそれで構わないか。


「はいはい、それで丸田のキャラ名は?」


『俺か? 俺はそのままマルタだ』


「そうか」


 お陰で、気兼ねすることも無さそうだ。


『なに笑ってんだよ』


「いや、あまりにも丸田が変わっていないと思って」


『そりゃ、男友達の前でまで、無理して大人ぶることもないだろう?』


「確かにその通りだ」


『ごちゃごちゃ、細かいことはいいから早くログインしろよ』


「ああ、そうだな」


 ヘッドセットをつけて。っと結構重いな。これは座ったままでは無理そうだ、ベッドで横になるか。


 電源は……ヘッドセットの横にあるこれか?

 よし、電源オン!新 しい機体と新しいゲーム。うーん、こんなにワクワクするのは久しぶりだ。


 ……。


 あれ?


 …………。


 特になにも起きないな。


「丸田、なにも起きないぞ」


『は?』


「電源を入れたが特になにも起きない」


『はあ、取説ぐらいちゃんと読めよ。お前は俺のとこの上司かよ! 電源入れたら1分ほど一度目をつぶるんだよ』


「そうなのか」


『そうなんだよ! いいから取りあえずやってみろよ』


「わかった」


 目をつぶるか。これがダイブの為のスイッチなのか?


『十四郎』


 丸田がうるさいし、とにかくやってみるか。


 目を瞑って。


 一分。



「ようこそガロンディアへ!」


 !?


 驚いたな。前置きもなくいきなり始まるのか。

 無機質な部屋の壁や床に、謎のランプや光の走る線。電脳空間ぽさ満開の部屋だ。


 そして、銀色ベースの全身タイツ。もといロボットもののパイロットスーツみたいな衣装の無表情なお姉さん。この人がゲームの案内役か?


「あなたの名前を登録して下さい」


 まずは名前からなのか。


「あなたの名前を登録して下さい」


 えーと名前、名前。めんどくさいな、そのままの名前でいいか。


 十四郎と。


「その名前は既に登録されています、別の名前をお願いします」


 ならカタカナだ。


「その名前は既に登録されています、別の名前をお願いします」


 平仮名。


「その名前は既に登録されています、別の名前をお願いします」


 アルファベット。


「その名前は既に登録されています、別の名前をお願いします」


 俺の名前、大人気だな。


「こちらで当て字を探しましょうか?」


 そんな便利な機能があるのか。


「お願いします」


「完了しました」


 どれどれ。


 《十死狼》


 ……。


「もう一度お願いします」


「完了しました」


 《獣死牢》


 …………。


「もう一度お願いします」


「完了しました」


 《十シ朧》


 もう面倒くさくなってきたな。

 これでいいか。


 じゃあこれで。


「完了しました」


 は?


 《ⅩⅣ狼》


 あ。


「ようこそⅩⅣ狼」


「あの、これって変更は?」


「不可能です」


 ……。


「不可能です」


 ……名前が格闘ゲームのタイトルみたいに。これ読める人いないだろ。


「それでは次のステップに進みます」


「少しぐらいへこむ時間は」


「く、次のステップに進みます」


 笑った?AIが? まさかな。


「これを」


 ボタン? しかもコテコテのポチッとなって感じのやつ。


「主神ガロンディアから、新たなる冒険者への祝福です」


 主神がガロンディアね。ゲーム名は神の名前なのか。


「これを」


 祝福ってのは初期アイテムかなにかか?


「わかった。押せばいいんだろ」


 ……。


 …………。


 なにも起きないな。


「次はⅩⅣ狼、貴方について教えて下さい。このシートに入力を」


 なんだこれは? 何が書いてあるかさっぱりわからないんだが。


「入力を」


 取りあえず選択タブとチェックマークは出るか。もう、適当にやるしかないな。




「終わったよ」


「お疲れ様です、ⅩⅣ狼。それではガロンディアをご堪能下さい」


 は?もう終わり? キャラクターの作成とかないの?


「え、ちょ」


「行ってらっしゃいませ」


 うお!? 目の前が真っ暗に。



 ▼▼▼▼▼



 ここは……どこかの部屋の中? 部屋の真ん中に球体、それ以外はなにもなしか。ここからどうしろと?


 そうだ、丸田。丸田に聞いてみれば!

 ……連絡の取り方がわからないな。


 ログアウトして電話を……。

 ログアウトの方法がわからないな。


 さて困った。

 

 ん?床になにか落ちてる?


 これは!初心者の心得。

 今の俺には必需品だ、とにかくログアウトの方法を。


 《最初にステータスで自分のジョブを確認》か。


 いや、それはいいからログアウトの方法を……書いてないな。これはあれか、一つ一つ進めないと次の項目がでない奴か?

 俺は気になるところから読んでいくタイプなんだが。と、ぼやいたところで意味はなしか。


 それでどうやって確認するんだ?


 お?次の行程がでてきた。なになに、ステータスの確認は左の手首を二回軽くノックする。


 こうか?


 おお、でたでた。しかしこうやって目の前にボードが出てくるのか。回りに人がいると気恥ずかしくて使えないな。


 っとそんなことより。


 ジョブ、ジョブっと。あった! これだな。


 名前:ⅩⅣ狼

 性別:男

 種族:市長

 ジョブ:市長


 《貴方は今日から市長です》


 は? 市長? これRPGですよね?

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