ローカル・キラーズVS

第47話「VS魔王 その1」

「無事とは言えないが勝ったようだね」


 茂みからエリザベスの声が聞こえると、バーサスは振り向いた。


「ああ、だが、まだこいつらの上がいるようだ」


 すこぶる楽しそうに語るバーサスに、


「ぷっ。なんて顔をしているんだ。まるで子供が新しいおもちゃを買ってもらったときのようだぞ」


「そんな顔をしていたか? だが、確かに楽しみではある」


 正直に感想を述べると、そこへユキエを拾ってきたドニーも合流し、4人全員が揃った。


「さて、次はなんだっけ、ボスがいるとかなんとかだったな」


「ああ、魔王と呼ばれていた」


 バーサスの「魔王」という言葉に一人目を輝かすユキエはハイテンションに騒いだ。


「ええっ! マジでっ! 魔王とか本当にいるの? 超ファンタジーじゃない。それに魔王ってよくRPGだと超絶イケメンだったりするし、これは期待大ねっ!」


 いったいなんの期待なのだと男性陣の2人は思ったが、エリザベスの追加の文言で納得した。


「そうだね。イケメンの顔が苦痛に歪むところは見ていて気持ちいいものな。流石ユキエだ」


「えっ、いや、違っ! ちょっと、そこの2人も納得しないでよ! 完全にエリザベスだけの趣味だからね! アタシはイケメンを普通に愛でるのが好きなだけなのぉ!」


 ユキエがイケメンを愛でたら、つまり殺してしまう結果になるのだが、本人はえらく真面目に愛でるだけのようで不憫に思ったドニーはスマホ越しにそっとユキエを撫でた。


「えっ!? なんでアタシ同情さえてるの?」


「…………」


 ユキエの明るい態度にドニーは涙を流し、そっと視線をそらすことしかできなかった。



「さて、閑話休題。話を戻そう」


 パンッと叩かれた手の音を合図に一同、エリザベスに注視する。


「今回は唯一相手の出方も種族も軍勢も勢力も何一つ分かっていない。どこから来るのかももちろん不明だ。そして、これが最重要なのだが、魔王とやらに私たちは特に実害を受けていない」


「あっ……」

「あっ! そうね!」


 なんとなく空気で戦うムードだったが、エリザベスの冷静な一言でユキエとドニーは声を漏らす。


「強いやつがいたら戦うのは普通ではないか?」


 唯一、戦う理由のあるバーサスだけはその言葉を不思議に受け止める。


「まぁ、私は肉たちはあのデュラハンのせいで全て持っていかれたし、これ以上失うものなんて研究所ラボくらいしかないしね」


「アタシももうエリザベスが諸々用意してくれるから、それこそエリザベスの研究所くらいしか重要なところってないのかな」


「おれ、バーサス、失う、イヤ、だから共になら戦っても、いい」


 ドニーだけ、自身の利益ではなく、仲間のことを思う発言に、ユキエはスマホの中で崩れ落ちた。


「ア、アタシは自分のことばかり……、この魂はもう完全に穢れてしまっているのね」


「大丈夫だ。ユキエ、もともと穢れているさ」


 エリザベスの慰めにもならない慰め、さらに同類からの言葉ではちっとも癒されず、むしろ余計に落ち込んだ。


「アタシはなんてダメな子なの……」


 ユキエの涙が落ちると共に、周囲が不気味に明るくなる。


「わぁ、キレイ。まるでアタシの心を浄化してくれるよう」


 ユキエだけが不気味と思わないあたり、さらに光の不気味さは3人の中で増した。


 そして、光はいくつかに分かれ、収束すると、幾重もの矢のように光が降り注いだ。

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